AIの進化がデータセンターの高速化を促す中、半導体技術の革新が急務となっている。調査会社Yole Groupによると、次世代の光パッケージング技術であるNPO/CPO市場は2031年に144億ドルに達する見込みだ。本稿では、この技術革新の概要と日本への影響を解説する。

1.6T/3.2T時代へ、プラガブル方式の限界

データセンター内部の相互接続帯域幅は、800Gbpsから1.6Tbps、さらに3.2Tbpsへと急速に拡大している。この高速化に伴い、従来のプラガブル(着脱可能型)光モジュールでは消費電力の増大や信号損失といった物理的な限界が顕在化してきた。

この課題を解決する新技術として、NPO(Near-Package Optics)とCPO(Co-Packaged Optics)が注目を集めている。これらは、光通信機能を半導体チップのより近くに配置することで、データ伝送の効率を飛躍的に高める技術だ。

年率21%で成長、2031年に144億ドル市場へ

Yole Groupが発表した報告書によれば、AIデータセンターや高性能コンピューティング(HPC)の需要拡大が、光パッケージング市場の成長を強力に牽引する。同市場は2025年の約45億ドルから、2031年には144億ドル規模に達すると予測される。

2025年から2031年にかけての年平均成長率(CAGR)は21%に上る見通しだ。特に2026年以降は、NPO技術が市場で急成長期に入ると分析されている。この予測は、次世代データセンターへの投資が今後本格化することを示唆している。

CPOが「究極のソリューション」に

中でもCPOは、業界内で「究極のソリューション」と目されている。2.5D/3D先進パッケージング技術を用い、光電変換を担う光エンジンとスイッチASICチップを同一基板上に集積する。これにより、従来のプラガブル方式では100mm以上あった電気信号の伝送経路を、ミリメートル単位にまで短縮できる。

伝送経路の短縮は、消費電力とデータ伝送の遅延を大幅に削減し、データセンター全体の性能向上に直結する。CPO技術の確立が、今後のAIやHPCの性能を左右する重要な鍵となる。

日本にとっての意味

AIデータセンターの高速化を支えるNPO/CPO市場の急成長は、日本企業にとって明確な機会とリスクをもたらす。まず、Yole Groupが予測する2031年の144億ドル市場は、光部品や光デバイスを供給する日本メーカーに大きな商機を提供する。特に、光エンジンや先進パッケージング技術に強みを持つ企業は、CPOが「究極のソリューション」と目される中で、その技術的優位性を確立できる可能性がある。例えば、光部品大手の住友電工や古河電気工業は、データセンター向け光トランシーバーや光ファイバーで実績があり、NPO/CPO関連部品への転換を加速することで市場シェアを拡大できる。

一方で、リスクも存在する。従来のプラガブル方式からNPO/CPOへの移行は、既存の光モジュール市場の縮小を意味し、この技術転換に対応できない企業は競争力を失う。特に、2026年以降NPO技術が急成長期に入るとの予測は、日本企業が迅速な技術開発と投資判断を迫られることを示唆する。また、CPOがスイッチASICチップと光エンジンを同一基板上に集積する特性上、半導体メーカーとの連携が不可欠となる。日本企業は、この新しいサプライチェーンの中で、自社の強みを活かせる立ち位置を早期に確立する必要がある。例えば、半導体製造装置や素材分野での強みを活かし、CPO製造プロセスにおけるキープレイヤーとなる戦略も考えられる。