中国で、未成年者のSNS利用開始年齢を16歳とする「デジタル成年」の導入が提案された。全国政治協商会議の委員が全国人民代表大会(全人代)の期間中に提言したもので、ネットゲームへの依存や有害情報への接触といった問題への対策が狙いだ。中国メディアが伝えた。

欧米の「一律禁止」とは一線

今年の全人代期間中、全国政治協商会議委員の于本宏氏は、未成年者を保護するためのSNS管理規定を策定し、16歳をSNS利用を開始できる「デジタル成年年齢」と定めるよう提案した。

背景には、欧米での規制強化の動きがある。オーストラリアは2025年末までに16歳未満のSNS利用を全面的に禁止する方針を打ち出し、イギリスやフランス、スペインなども同様の規制を導入しており、世界的な議論を呼んでいる。しかし、上海交通大学の李暁静教授は、中国の国情やガバナンスモデル、独自の課題を考慮すれば、欧米の画一的な禁止措置を安易に模倣するのは適切ではないと指摘する。

専門家、リテラシー教育の重要性を強調

李教授は、利用を単に禁止するのではなく、デジタルリテラシー教育を強化することの重要性を強調している。情報の洪水の中で正しく取捨選択し、自らを守り、建設的にSNSを活用する方法を教えることが不可欠だと主張する。

デジタルリテラシー教育は、未成年者をネット上のリスクから守るための重要な手段となる。中国では今後、法規制と並行して、若年層へのデジタル教育を強化する必要があるとの認識が広がっている。

日本にとっての意味

中国におけるSNS利用の年齢制限提案は、日本企業にとって二つの具体的な影響をもたらす。第一に、中国のデジタルコンテンツ市場、特に若年層をターゲットとするゲームやSNS関連サービスを展開する日本企業は、事業戦略の見直しを迫られる。例えば、DeNAやGREEのような中国市場に参入しているゲーム会社は、16歳未満のユーザー獲得が困難になる可能性があり、既存のビジネスモデルやコンテンツ開発の方向性を調整する必要がある。

第二に、中国政府が欧米の「画一的な禁止措置」とは一線を画し、デジタルリテラシー教育を重視する姿勢は、新たなビジネス機会を生む。教育コンテンツやデジタルスキル向上プログラムを提供する日本のEdTech企業にとっては、中国の教育機関や家庭向けにサービスを提供する余地が生まれる。例えば、プログラミング教育や情報倫理に関する教材開発に強みを持つ企業は、中国のデジタル教育市場への参入を検討できる。

最後に、中国のガバナンスモデルがデジタル空間の管理において独自の道を模索する動きは、将来的なデータガバナンスやプライバシー保護の国際的な議論において、日本企業が中国市場で事業を展開する上での新たな規範形成に影響を与える。中国での事業展開を考える日本企業は、単なる規制強化として捉えるのではなく、中国独自の「デジタル成年」概念がもたらす市場の変化と、それに伴う新たなニーズを分析し、戦略に組み込む必要がある。