中国で宇宙旅行ビジネスが本格化しつつある。北京の宇宙開発スタートアップ、北京トランスオービット・スペース・テクノロジーは2024年1月22日、商業有人宇宙船「トランスオービット1号」の実物大モックアップを初公開した。同社は2028年の商業飛行開始を計画しており、すでに搭乗チケットの予約受付を開始していると報じられている。
2028年の商業飛行目指す「トランスオービット」
北京トランスオービット・スペース・テクノロジーは、北京で開催したグローバル発表会でサブオービタル(準軌道)宇宙船「トランスオービット1号」の実物大モックアップを披露した。同社は2028年の商業飛行実現を目標に掲げ、安全性や信頼性、機体の再利用性といった技術的課題の解決に取り組んでいる。
同社はすでに搭乗チケットの予約を受け付けており、宇宙旅行ビジネスの商業化に向けた動きを加速させている。米国のヴァージン・ギャラクティックやブルー・オリジンなどが先行する市場に、中国企業が本格参入する形だ。
CAS Spaceなど競合も開発を加速
中国では他の民間企業も宇宙旅行市場への参入を目指し、開発競争が激化している。
紫微科学技術(ズーウェイ・テクノロジー)は2022年にサブオービタル飛行での再突入・帰還試験に成功。現在は再利用可能なサブオービタル有人宇宙船「D6」の開発を進めている。
また、中国科学院系のスタートアップである中科宇航(CAS Space)も、運搬ロケット「力箭1号(Lijian-1)」によるサブオービタル飛行に成功した。同社は今後、高度100kmからの機体回収技術の検証などを計画しており、商業宇宙旅行の実現に向けた技術基盤を固めている。
日本にとっての意味
中国の宇宙旅行ビジネスの本格化は、日本にとって複数の機会と課題を提示する。まず、北京トランスオービット・スペース・テクノロジーが2028年の商業飛行を目指し、すでにチケット予約を開始していることは、高精度部品や素材、アビオニクスといったサプライチェーンにおいて、日本の技術力が貢献できる可能性を示す。特に、安全性が最重要視される宇宙船開発において、日本の高信頼性技術は競争優位性を発揮し得る。
次に、CAS Spaceが運搬ロケット「力箭1号(Lijian-1)」のサブオービタル飛行に成功しているように、中国の宇宙開発は国家主導から民間主導へとシフトしつつある。これは、日本の宇宙ベンチャー企業が、中国市場への技術提供や共同開発の機会を探るべき時期であることを意味する。例えば、宇宙空間での生命維持システムや、再利用可能な機体開発における素材技術など、特定のニッチ分野での提携が考えられる。
しかし、中国企業の急速な技術進展は、日本の宇宙産業における競争激化を招く。特に、低コストでの開発・運用能力を持つ中国企業が、将来的に国際市場で優位に立つ可能性もある。これに対抗するため、日本は独自の強みである精密加工技術や、宇宙デブリ対策などの環境技術に特化し、差別化を図る必要がある。また、知的財産権の保護や技術流出リスクへの対策も、中国企業との連携を検討する上で不可欠となる。