2024年の春節(旧正月)休暇に、中国の若者世代を中心に海外で過ごす動きが活発化している。オンライン旅行大手「同程旅行」が発表したデータによると、春節期間中の国際航空券の予約数は前年比で18%増加した。伝統的な過ごし方から離れ、家族との新たな体験を求める傾向が背景にある。

伝統的な慣習から離れ、新たな体験を重視

今年の春節休暇は有給休暇などと組み合わせることで最長9連休となり、多くの若者が海外旅行を計画している。彼らが海外を選ぶ大きな理由の一つは、旧正月の伝統的な慣習から距離を置き、家族と共に新しい体験を共有したいという価値観の変化だ。ある女性は「春節は家族と過ごす大切な時間だが、いつもと違う環境で新しい思い出を作りたい」と語った。

長期休暇とコストパフォーマンスが決め手に

海外旅行ブームを後押ししているのは、長期休暇に加え、一部の国や地域では国内旅行よりも費用を抑えられるという経済的な側面だ。特に東南アジア諸国などが人気を集めているという。別の利用者は「国内の主に観光地よりも物価が安い場合が多く、費用対効果が高い」と、海外を選ぶ理由を説明した。

日本の関連性

2024年春節の海外旅行予約が前年比18%増加したことは、日本の観光産業にとって二つの明確な機会と一つのリスクを示唆する。

第一に、中国の若者世代が「伝統的な慣習から離れ、新たな体験を求める」傾向は、日本への誘客戦略を再考する好機となる。これまでのような「爆買い」需要に依存せず、文化体験や地域交流など、よりパーソナルな体験型コンテンツの提供を強化すべきだ。例えば、地方の伝統工芸体験や、アニメ・漫画の聖地巡礼ツアーなど、若者がSNSで共有したくなるような独自性の高いプログラム開発が求められる。

第二に、「コストパフォーマンス」を重視する彼らの動向は、円安が続く日本にとって追い風となる。特に、これまで中国国内旅行と比較して割高と見なされがちだった地方都市への誘客に注力できる。例えば、北海道のスキーリゾートや沖縄のビーチリゾートなど、東南アジア諸国と競合しつつも、日本ならではの高品質なサービスや治安の良さを訴求することで、新たな顧客層を開拓できる可能性が高い。

一方、リスクとして、中国国内の旅行需要が海外に流れることで、日本企業が中国国内で展開する観光関連ビジネス、例えばホテルやテーマパーク事業の収益に影響が出る可能性がある。中国の若者が「国内の主に観光地よりも物価が安い場合が多い」と海外を選ぶ傾向は、中国国内の観光地が提供する価値と価格のバランスを見直す必要性を示唆しており、これは日本企業が中国市場で事業展開する上での競争環境の変化として認識すべきだろう。