モルガン・スタンレーの最新報告書によると、AI(人工知能)半導体向けの需要が極めて旺盛なことから、半導体の後工程サービス価格が2026年までに5〜20%上昇する可能性がある。台湾のOSAT(後工程専門企業)ではすでに受注が急増し、価格引き上げの動きが出ている。
AI半導体需要で後工程が逼迫
モルガン・スタンレーは最新の調査報告書で、AI半導体向けの需要が極めて強く、世界最大手のOSATである日月光半導体製造(ASE)の生産能力が限界に近づいていると指摘した。このため、2026年には後工程サービスの価格が5〜20%上昇すると予測している。
後工程は、回路を形成したシリコンウェーハをチップに切り出し、樹脂などで封止(パッケージング)して検査する半導体製造の最終段階を指す。AI半導体は高性能化に伴い、パッケージング技術も複雑化しており、需給が逼迫しやすい構造となっている。
台湾OSAT各社、相次ぎ価格引き上げ
この動向を受け、台湾のOSATである力成科学技術(PTI)、華東科学技術、南茂科学技術などでは注文が急増しており、生産能力の稼働率はほぼ上限に達している。各社は近くパッケージング価格の調整に踏み切り、一部ではすでに最大30%の値上げを開始したと、台湾メディアは伝えている。
米国の対中半導体制裁が続くなか、世界的にサプライチェーンの再編が進んでおり、台湾の半導体産業への依存度は一層高まっている。後工程の価格上昇は、半導体全体のコストを押し上げる要因となる。
SKハイニックス、AI向けに巨額投資
一方、韓国のSKハイニックスは、AI向けメモリーの需要拡大に対応するため、先進パッケージング工場に19兆ウォン(約2.1兆円)を投資すると発表した。高帯域幅メモリー(HBM)など、AIに不可欠な先端メモリーの生産能力を増強し、後工程の内製化も進めることで競争力を高める狙いだ。
各国企業はAI関連のサプライチェーン強化を急いでおり、後工程分野への投資が活発化している。中国も国内半導体産業の育成を国家戦略として推進しており、国際的な開発競争はさらに激化する見通しだ。
日本への影響と今後の展望
AI半導体後工程の価格高騰は、日本のエレクトロニクス産業に直接的な影響を及ぼす。特に、AI関連製品を開発する日本企業は、半導体調達コストの上昇に直面する。モルガン・スタンレーの予測する2026年までの5〜20%の値上げは、最終製品の価格転嫁や利益率圧迫につながる可能性がある。例えば、AIチップを搭載する産業用ロボットや自動車部品メーカーは、このコスト増を吸収する戦略を練る必要がある。
一方で、日本の半導体製造装置メーカーや材料メーカーには新たな商機が生まれる。台湾のOSAT各社が生産能力の限界に達し、パッケージング価格を最大30%値上げしている現状は、後工程設備の増強投資を促す。ディスコや東京エレクトロンといった日本の装置メーカーは、ASEやPTIのような台湾企業からの需要増を見込める。また、複雑化するパッケージング技術に対応する高機能材料の需要も拡大し、素材メーカーにも恩恵がある。
さらに、SKハイニックスが19兆ウォンを投じて後工程の内製化を進める動きは、日本の半導体産業がサプライチェーンの特定工程に過度に依存するリスクを浮き彫りにする。日本企業は、特定の台湾OSATへの依存度を再評価し、国内での後工程技術開発や、複数サプライヤーとの関係構築を検討する必要がある。これは、地政学リスクが高まる中で、サプライチェーンの強靭化を図る上で喫緊の課題となる。