中国の新興電気自動車 (EV) メーカー、威馬汽車 (WM Motor) が経営再建の一環として、傘下企業の巨額債権や株式をわずか100元 (約2100円) の開始価格で競売にかけ、市場に波紋が広がっている。中国EC大手タオバオ (Taobao(淘宝)) の競売プラットフォーム情報によると、同社の調達・販売子会社が保有する帳簿価格計2億6800万元 (約57億円) かなりの対外債権などが対象となった。

巨額債権が「二束三文」に

WMモーターの調達子会社が保有する1億2800万元 (約27億円) の対外債権は、独ボッシュやへラーなど世界的な自動車部品大手24社に対するものだ。この債権は一括で100元から出品され、最終的に9万3500元 (約200万円) で落札された。

しかし、競売運営者はこれらの債権の真実性や回収可能性を「一切保証しない」と明記している。WMモーターの内部システムが2022年末に停止して以来、契約書などの重要書類の所在が不明となっており、債権の有効性自体に重大な疑義が生じているためだ。同様に、販売子会社が保有する約1億4000万元 (約30億円) の債権も100元で出品され、わずか5000元 (約10万円) で落札される異例の事態となった。

頓挫する再建計画

WMモーターは2023年9月、サプライヤー向けに事業計画を発表し、2年以上停止していた生産活動の再開と、破産手続きを経た経営再建への意欲を示していた。同年11月には専用アプリの再開や新販売会社の設立を発表し、市場復帰を目指す姿勢を強調した。

しかし、今回の資産売却は、同社の経営実態が極めて深刻であり、再建計画が実質的に破綻していることを示唆している。2026年までに年間10万台の生産という目標を掲げていた同社の先行きは、極めて不透明となっている。

日本市場への影響

WMモーターの巨額債権がわずか100元で競売にかけられたことは、中国EV市場の熾烈な競争環境と、それに伴う日本企業への具体的なリスクと機会を示唆する。

第一に、ドイツのボッシュやヘラーといった世界的な自動車部品大手24社に対する1億2800万元(約27億円)の債権が最終的に9万3500元(約200万円)で落札された事実は、中国EVメーカーの経営破綻がサプライヤーに与える影響の深刻さを浮き彫りにする。日本の自動車部品メーカーも、中国EVメーカーとの取引において、与信管理の厳格化と契約内容の再確認が喫緊の課題となる。特に、重要書類の所在不明というWMモーターの事例は、契約の有効性自体が問われ得るリスクを示しており、取引先の財務健全性だけでなく、内部管理体制の確認も不可欠である。

第二に、WMモーターの再建計画が事実上頓挫したことは、中国EV市場における「勝者総取り」の傾向が強まることを意味する。これは、競争力のある中国EVメーカーとの協業機会が増大する可能性を秘める。例えば、バッテリー技術や自動運転関連技術を持つ日本企業は、淘汰を生き残った有力EVメーカーとの提携を通じて、中国市場での存在感を高めるチャンスがある。

第三に、タオバオの競売プラットフォームで資産が売却されたことは、中国における資産整理の透明性と効率性がまだ発展途上であることを示唆する。日本企業が中国で事業撤退や再編を検討する際、資産売却や債権回収が極めて困難になる可能性を考慮し、出口戦略をより慎重に策定する必要がある。