中国のメッセージアプリ大手WeChat(WeChat(微信))は、ファーウェイが開発する独自OS「HarmonyOS鴻蒙OS)」向けアプリの最新版(バージョン8.0.17.36)をリリースした。公式発表では「既知の不具合を修正」とされているが、詳細な検証により、AIを活用した新機能や動画機能の拡充、Appleサービスとの連携強化など、多岐にわたる機能追加が確認された。

最新アップデートの概要

今回のアップデートは、HarmonyOSWeChatのインストール数が5369万件に達する中で実施された。特に注目されるのは、AIによる楽曲制作や歌唱機能の追加、動画投稿機能の強化である。これにより、ユーザーはよりクリエイティブなコンテンツをアプリ内で生成・共有できるようになる。また、Appleサービスとの連携強化により、支払い管理の利便性も向上している。

動画機能とAIの進化

動画投稿機能「動画号(ビデオアカウント)」では、新規登録が可能になったほか、ライブ配信時に位置情報のタグ付け、配信タイプの選択、視聴者からのギフトや「いいね」の許可設定など、詳細なオプションが追加された。さらに、「聴く(听一听)」機能には「楽曲制作」と「音楽空間」が加わり、AIが楽曲を生成したり、既存の曲をAIが歌唱したりする機能が搭載された。これらのAI機能は段階的に提供される見込みで、現時点ではAndroid版やiOS版には未搭載だと新華社通信は伝えた。

利便性向上の新機能

利便性向上の面では、iOS/Androidデバイスとの写真・ファイルの送受信がQRコード経由で可能になった。また、「マイQRコード」のスタイルが統一され、「友達追加」と「対面紅包(お年玉)」のQRコードを切り替えて述べたできるようになった。さらに、Appleサービス利用料の支払い管理機能が「私―サービス―ウォレット―支払い設定」に追加され、Appleアカウントからの引き落とし額や支払い方法の管理、停止が可能になった。これにより、Appleデバイスユーザーの利便性が大幅に向上するとみられる。

日本への影響と示唆

WeChatHarmonyOS版アップデートは、日本企業にとって具体的なリスクと機会を提示する。まず、AIによる楽曲制作や歌唱機能の追加は、日本の音楽・エンタメ業界に新たな競争圧力を生む。中国の巨大なユーザーベース(HarmonyOS版WeChatのインストール数は5369万件)がAI生成コンテンツの消費・流通プラットフォームとなることで、日本のコンテンツプロバイダーは、中国市場での優位性を維持するために、より高度なAI活用や差別化戦略を迫られる。

次に、Appleサービスとの連携強化は、日本の決済サービスやフィンテック企業にとって新たな市場参入障壁となり得る。WeChatがAppleアカウントからの引き落とし額や支払い方法の管理機能をOSレベルで提供することで、中国市場におけるAppleユーザーの囲い込みが強化され、日本のサービスが参入する際のハードルが高まる。

一方で、動画投稿機能「動画号」の強化は、日本のコンテンツ制作企業やMCN(マルチチャンネルネットワーク)にとって、中国市場での新たな収益機会となり得る。ライブ配信時の位置情報タグ付けやギフト機能の拡充は、日本のインフルエンサーやブランドが中国の消費者と直接的にエンゲージし、収益化を図るためのプラットフォームとして「動画号」の魅力を高める。ただし、中国の規制環境やコンテンツポリシーへの適応が不可欠となる。