スマートフォン大手のシャオミ(シャオミ)は、同社初となる電気自動車(EV)「SU7」の安全性に関する詳細を公開した。特に、側面衝突時に車輪を意図的に離脱させて乗員スペースへの衝撃を軽減する安全設計に焦点を当てており、その仕組みを分解動画で初めて明らかにした。

車輪を犠牲に乗員を守る設計思想

シャオミが公開した技術は、中国語で「丢轮保车 (diū lún bǎo chē)」と呼ばれる設計思想に基づくものだ。これは直訳すると「車輪を捨てて車体を守る」という意味で、深刻な側面衝突が発生した際に、衝撃を受けた側の車輪がサスペンションごと車体から離脱する仕組みを指す。

この設計により、車輪が車室内に侵入して乗員を傷つけるのを防ぎ、生存空間を確保する。シャオミの雷軍(レイ・ジュン)CEOによると、この技術はメルセデス・ベンツやボルボといった高級車ブランドでも採用されている実績のあるものだという。シャオミは分解動画を通じて、この目立たないが重要な安全設計を一般に公開し、技術力をアピールした。

EV特有の安全課題への挑戦

EVは、大容量バッテリーを搭載するため車両重量が同クラスのガソリン車より重くなる傾向がある。そのため、衝突時の運動エネルギーが大きくなり、車体にはより高い剛性と衝撃吸収性能が求められるのが一般的だ。

シャオミはSU7の開発において、こうしたEV特有の課題に対応するため、車体構造の最適化や高張力鋼板の採用など、多角的なアプローチで安全性を追求している。今回の技術公開は、新興メーカーであるシャオミが、既存の自動車メーカーと同等以上の安全基準を目指していることを示す動きだ。シャオミは今後も安全性向上のための技術開発を継続する方針だと、中国の複数のテクノロジーメディアが報じている。

日本企業への示唆

シャオミEV「SU7」の安全技術公開は、日本企業にとって二つの具体的な影響をもたらす。第一に、EVの安全性に関する技術革新が中国発で加速している現実を突きつける。シャオミが公開した「丢轮保车」の設計思想は、メルセデス・ベンツやボルボといった既存の高級車ブランドでも採用実績があるとされるが、新興EVメーカーがこれを分解動画で詳細に公開し、技術力をアピールしたことは、技術開発における情報公開のあり方にも一石を投じる。日本メーカーは、安全技術の「秘匿」から「公開による信頼獲得」へのパラダイムシフトを迫られる可能性がある。

第二に、日本企業は中国市場におけるEV安全基準の動向に、より戦略的に対応する必要がある。シャオミがEV特有の重量増による衝突エネルギー増大に対し、高張力鋼板の採用や車体構造の最適化といった多角的なアプローチで安全性を追求していることは、中国政府がEVの安全規制を強化する可能性を示唆する。例えば、高張力鋼板のサプライヤーである日本製鉄やJFEスチールといった企業は、中国EVメーカーからの需要増を見込める一方、より高度な安全基準への対応が求められる。また、日本自動車部品メーカーは、シャオミのような新興EVメーカーとの協業を通じて、新たな安全技術の共同開発や部品供給の機会を探るべきである。中国市場のEV安全技術トレンドを理解し、迅速に対応することは、日本企業の競争力維持に不可欠となる。