香港証券取引所に上場する半導体装置メーカー、芯成科学技術(Xintec)が2023年12月期決算で大幅な増収を達成した。売上高は前年比36.6%増の約3億3800万香港ドル(約68億円)に達した。米国の輸出規制を背景とした中国の半導体国産化の流れに乗り、AI半導体向けの先進技術で業績を伸ばしている。

AI半導体国産化が追い風、純利益も確保

芯成科学技術が発表した2023年12月期の年次報告書によると、売上高は前年比36.62%増の3億3800万香港ドル、株主に帰属する純利益は1919万7000香港ドル(約3億8000万円)となった。事業の中核を担うのは、完全に子会社の日東智能装備科学技術(深圳)だ。同社は長年、電子部品を基板に実装するSMT(表面実装技術)や半導体製造装置分野に注力し、生産ライン全体のソリューションを提供できる強みを持つ。

先進パッケージング技術で優位性を確立

業績拡大の原動力は、AIチップやHBM(広帯域メモリー)など最先端半導体向けの技術開発だ。同社は、複数のチップを高密度に集積する「2.5D/3D先進パッケージング」と呼ばれる後工程技術で、主な材料と装置の技術的課題を克服したと発表した。具体的には、AIチップの性能を左右する冷却効率を高める高熱伝導性のTIM(サーマルインターフェースマテリアル)やアンダーフィル材、高性能な装置を市場に投入している。

国産化の波に乗り、高成長分野へ展開

芯成科学技術は、半導体分野で培った精密な接合技術を武器に、車載エレクトロニクスや医療機器といった高成長市場への展開も加速させている。米国の規制で海外からの先端装置の導入が困難になる中、同社のような国内企業が技術力を高め、国産化需要の受け皿となっている構図が鮮明になった。中国国内の半導体サプライチェーンにおける同社の役割は、今後さらに重要性を増すと見込まれる。

日本への影響と今後の展望

Xintecの36.6%増収は、米国の輸出規制が中国の半導体国産化を加速させ、日本企業に新たな事業機会とリスクをもたらすことを示唆する。

まず、XintecがAI半導体向け後工程技術、特に2.5D/3D先進パッケージングや高熱伝導性TIM(サーマルインターフェースマテリアル)、アンダーフィル材で業績を伸ばしている点は、日本の材料メーカーにとって直接的な競争激化を意味する。例えば、信越化学工業やJSRといった日本の高機能材料メーカーは、これまで優位性を保ってきた分野でXintecのような中国企業が技術力を高め、国産化の波に乗って市場シェアを奪う可能性がある。

次に、Xintec子会社の日東智能装備科学技術(深圳)がSMT(表面実装技術)や半導体製造装置分野で生産ライン全体のソリューションを提供できる強みは、日本の装置メーカーにとって脅威となる。ディスコや東京エレクトロンなど、日本の半導体製造装置メーカーは、中国市場での競争環境が一段と厳しくなることを想定する必要がある。特に、中国政府が国産化を強力に推進する中で、Xintecのような企業が国内サプライチェーンの要となる可能性が高い。

最後に、Xintecが車載エレクトロニクスや医療機器といった高成長市場への展開を加速させていることは、日本の電子部品メーカーや医療機器メーカーにとって、中国市場での新たな競合の出現を意味する。村田製作所やTDKといった日本の電子部品大手は、中国国内で技術力を蓄積した企業が、半導体技術を応用して周辺分野に進出する動向を注視し、自社の競争戦略を見直す必要がある。