光電融合(フォトニクス・エレクトロニクス融合)型AIチップを手掛ける中国のスタートアップ、曦智科学技術(Xizhi Technology)が4月28日、香港証券取引所に上場した。初値は公開価格183.2香港ドルを大幅に上回る880香港ドルを付け、終値は公開価格の約4.8倍となる886香港ドルで引けた。これにより時価総額は約815億香港ドル(約1兆6000億円)に達し、AI向けシリコンフォトニクス分野のユニコーン企業として市場の注目を集めた。

AI向け光インターコネクトで急成長

2018年設立の曦智科学技術は、光電融合技術を活用し、AIの計算処理に不可欠な高速・大容量データ伝送を実現する「近接実装光学(NPO)」や「共用実装光学(CPO)」を中核技術とする。同社は光行列計算やチップ間・チップ内光ネットワークといった独自技術を強みとし、光電融合を用いた計算アクセラレーターカードなどを提供。2024年に量産を開始した光インターコネクト製品「Scale-up」が現在の収益を牽引している。

巨額の研究開発投資で成長を加速

同社が提示したした資料によると、2023年から2025年にかけての売上高の年平均成長率は66.9%に達し、2025年には売上高が1億元(約21億円)を突破する見通しだ。一方で、先端技術への巨額投資により、2023年時点では4.14億元(約87億円)の純損失を計上している。同社は積極的な投資姿勢を維持し、調達資金の70%を今後5年間の研究開発に充当する計画で、特に2025年末に予定する次世代光インターコネクト製品の量産に資源を集中させる方針だ。

中国市場で圧倒的シェアを確立

中国の光インターコネクト市場は、2025年の57億元から2030年には1805億元へと、年平均99.6%で急成長すると予測されている。曦智科学技術は2025年時点で、中国の独立系光インターコネクト市場において88.3%という圧倒的なシェアを確保する見込みで、同分野のトップランナーとしての地位を固めている。Alibaba(Alibaba)やテンセントTencent)、シンガポールの政府系投資会社テマセク(Temasek)といった有力な機関投資家も同社に出資しており、その成長性への期待は高い。

日本の関連性

曦智科学技術の香港IPOは、日本の半導体・エレクトロニクス産業に対し、技術と市場の両面で具体的な課題と機会を提示する。まず、同社が推進する光電融合技術、特に「近接実装光学(NPO)」や「共用実装光学(CPO)」は、AIデータ伝送のボトルネック解消に不可欠であり、日本の光部品メーカーや装置メーカーにとって新たなビジネス機会となる。例えば、日本の光デバイス技術は世界トップレベルであり、曦智科学技術のような急成長企業との協業や部品供給を通じて、高付加価値製品の需要を取り込む余地がある。

次に、曦智科学技術が2025年時点で中国の独立系光インターコネクト市場の「88.3%」という圧倒的シェアを確保する見込みであることは、日本企業が中国市場で同分野への参入を検討する際の障壁の高さを示す。これは、単なる競争激化ではなく、中国政府の後押しや国内エコシステムの強固さを意味するため、日本企業は直接的な市場参入よりも、技術提携や共同研究開発といった形で関与する戦略が現実的となる。

最後に、曦智科学技術が2023年から2025年にかけて売上高の年平均成長率「66.9%」を予測し、かつ調達資金の「70%」を研究開発に充当する計画は、中国企業が先端技術分野で巨額投資を継続する姿勢を明確に示している。これは、日本の半導体関連企業が技術革新のスピードで後れを取るリスクを内包する。特に、次世代光インターコネクト製品の開発競争において、日本企業は自社の強みである材料技術や精密加工技術を活かし、差別化されたニッチ市場の開拓や、グローバルサプライチェーンにおける独自の地位確立を急ぐ必要がある。