中国のスポーツテック企業である雪狐科学技術 (Xuehu Technology) は、スキーヤーの滑走データをリアルタイムで分析するAI搭載インソール「Ski-AI Pro」を発表した。内蔵センサーで収集したデータを基に、滑走フォームの改善や怪我の予防を支援する。新華社通信によると、2025年冬シーズンの発売を目指しているという。

滑走の「見える化」で技術革新を

「Ski-AI Pro」は、インソールに内蔵された複数の圧力センサー9軸IMU (慣性計測装置) を通じて、滑走中の荷重バランス、エッジングの角度、ターンのタイミングといった身体動作をミリ秒単位で計測する。収集されたデータは専用アプリケーションに無線送信され、利用者は自身の滑りを3Dモデルやグラフで客観的に確認できる。

開発を主導した同社の李昊文 (り・こうぶん) CEOは、「これまで感覚に頼らざるを得なかった滑走技術をデータで可視化することで、あらゆるレベルのスキーヤーが安全かつ効率的に上達できる環境を提供したい」と開発の動機を語った。自身のスキー経験から「データによる滑走の進化」という着想を得て、製品化に至った。

パーソナライズ機能の拡充へ

雪狐科学技術は今後、AIによる分析機能をさらに強化し、個人の技術レベルや目標に合わせたトレーニングメニューを自動生成する機能の追加を計画している。例えば、特定のターンにおける癖をAIが検出し、改善のための具体的なドリルを提案するといった応用が期待される。

開発チームは、同製品が単なるデータ収集デバイスに留まらず、スキーヤー一人ひとりに寄り添う「デジタルコーチ」としての役割を担うことを目指している。プロ選手や指導者と連携し、より高度で実用的なフィードバック機能の実装を進める方針だ。

日本にとっての意味

中国の雪狐科学技術が開発したAI搭載インソール「Ski-AI Pro」は、日本のスポーツ用品メーカーや関連産業に直接的な影響を与える可能性がある。特に、スキーブーツやインソールを手がける企業は、この技術がもたらす市場の変化を注視する必要がある。例えば、サロモンやアトミックといった国際ブランドが日本市場で展開する製品群に対し、「Ski-AI Pro」が提供するミリ秒単位のデータ分析とパーソナライズされたトレーニング提案は、新たな競争軸を提示する。

日本のスキー用品市場では、従来感覚に頼っていた技術習得に対し、データに基づいた客観的な分析が可能な製品の登場は、高機能製品への需要を喚起する可能性がある。しかし、同時に日本のメーカーは、自社製品へのAI技術統合や、データ分析サービスの提供といった新たな付加価値戦略を迫られるだろう。特に、日本の高齢化社会において、怪我の予防や安全なスポーツ活動への関心が高まる中、「Ski-AI Pro」が謳う怪我予防機能は、消費者にとって魅力的な訴求点となり得る。

また、李昊文CEOが語る「デジタルコーチ」としての役割は、日本のスキー指導者やスクール運営にも影響を及ぼす。データに基づいた指導法が普及すれば、従来の指導ノウハウに加えて、データ解析のスキルが求められるようになるだろう。これは、日本のスポーツテック企業にとって、AIを活用したスポーツ指導プラットフォーム開発や、データ連携による新たなビジネスモデル構築の機会となる。