NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、人工知能(AI)が電力やインターネットのような社会基盤になるとの見解を示した。フアンCEOはAIを5つの階層構造で解説し、物理的なインフラと経済原理に基づいた「知能を生み出す工場」だと定義した。

AIは電力のような社会基盤に

フアンCEOは、AIが今後、世界を変える最も強大な力の一つになると強調した。AIは単なるアプリケーションや特定のモデルではなく、電力やインターネットのように社会に不可欠な基盤技術になるという。フアンCEOによると、AIは物理的なハードウェア上で稼働し、現実のエネルギーを消費し、実際の経済原理に従う。

その上で、AIを「巨大な工場が原材料を知能へと変換するように、絶え間なく価値を生み出し続ける存在」と表現した。

AIを構成する5つの階層

フアンCEOは、AIを理解するには5つの層に分けて考える必要があると説明する。

最下層はエネルギーだ。リアルタイムで生成される知能には、リアルタイムで消費される電力が必要不可欠となる。

第2層は半導体チップで、エネルギーを大規模かつ効率的に計算能力へ変換する役割を担う。チップの性能がAIの進化速度とコストを左右する。

第3層はインフラストラクチャーだ。これには土地、電力供給、冷却システム、建物、ネットワークなどが含まれる。これらは情報を保存する従来のデータセンターとは異なり、知能を生産するために設計された「AI工場」であるとフアンCEOは述べた。

第4層はAIの頭脳にあたるモデルだ。大規模言語モデル(LLM)に代表されるこれらのモデルは、多種多様な情報を理解し、処理する能力を持つ。

最上層が、経済的価値が創出されるアプリケーション層となる。AIの進化は、これら5つの層が一体となって進むことで実現されるという。

日本にとっての意味

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが提唱するAIの5層構造は、日本の産業界に具体的なリスクと機会をもたらす。まず、最下層の「エネルギー」と第3層の「インフラストラクチャー」は、日本の電力供給能力とデータセンターインフラの脆弱性を露呈させる。AI工場は「リアルタイムで消費される電力」を必要とし、既存のデータセンターとは異なる設計が求められるため、電力安定供給と新たなインフラ整備への投資が喫緊の課題となる。再生可能エネルギーへの転換加速と送電網の強化は、AI時代における日本の国際競争力維持に直結する。

次に、第2層の「半導体チップ」は、日本の半導体製造装置・素材産業に新たなビジネス機会を提供する。AIチップの性能がAIの進化速度とコストを左右するとフアンCEOが指摘するように、先端半導体製造技術への需要は高まる一方だ。東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった企業は、製造装置の供給を通じてAI産業の基盤を支える重要な役割を担う。

最後に、最上層の「アプリケーション」層は、日本の各産業におけるAI導入の遅れが競争力低下に繋がるリスクを孕む。特に製造業やサービス業において、AIを活用した生産性向上や新サービス創出が急務となる。AIモデル開発やアプリケーション実装を担う国内スタートアップへの投資を促進し、日本企業がAIを自社の事業に組み込むための支援策を強化することが、AI時代における日本の経済成長に不可欠である。