生成AI(人工知能)ブームが、PCやスマートフォンの基幹部品であるメモリー半導体の価格を押し上げている。AIサーバー向け高性能メモリー(HBM)に生産能力が集中した結果、汎用DRAMの供給が逼迫。一部製品は過去半年で価格が3倍以上に高騰した。このコスト増は消費者向け製品の値上げに直結する可能性が高く、各メーカーは対応を迫られている。

DDR4は品薄、半年で価格3倍超に

過去半年で最も値上がりしたのは、金やビットコインではなくPC用メモリーだ。台湾の調査会社トレンドフォース(TrendForce)によると、DRAMの大口契約価格は2023年第4四半期から2024年第1四半期にかけ、2四半期連続で大幅に上昇した。一部製品の価格上昇率は40%を超える。また、カウンターポイント(Counterpoint Research)のレポートは、2024年第1四半期のメモリー価格が前期比で80〜90%も上昇したとのデータを示している。

具体的には、汎用的なDDR4 16GBメモリーの現物価格は年初から200%〜340%の上昇を記録。サーバー用の64GB RDIMMメモリーも、2023年第4四半期の約450ドルから2024年第1四半期には900ドル超へと倍増した。市場では旧世代のDDR4が最新のDDR5より高くなる価格の逆転現象も発生している。

背景にAI向けHBMへの生産能力シフト

今回の価格高騰は、過去のPCやスマートフォンの買い替えサイクルが引き起こしたものとは根本的に異なる。直接的な原因は、AIサーバー需要の爆発的な増加だ。サムスンSKハイニックスマイクロン・テクノロジーの世界3大メーカーは、設備投資の約8割をAI向けのHBMやDDR5といった高収益製品に振り向けている。

その結果、一般消費者向けのPCや旧世代サーバーで広く使われるDDR4の生産能力が著しく圧迫されている。サムスンはDDR4の生産比率を20%以下に削減したと報じられた。台湾のメモリー大手ADATAの会長は「古い製品を新しい設備で生産しても採算が合わない」と指摘しており、DDR4の品薄は構造的な問題となっている。

PC・スマホへの価格転嫁、不可避に

需要面では、AIサーバーが世界のDRAM総生産能力の約3分の2を消費するとの予測もある。残りの供給量をスマートフォン、PC、家電、自動車など全ての市場で分け合う構図だ。AmazonやGoogleなどの巨大クラウド企業が長期契約で供給を確保する一方、一般のメーカーは残りを奪い合う状況に陥っている。

コスト上昇の波はすでに最終製品に及び始めている。レノボデルHPは最大20%の値上げを顧客に通知したとされる。中国のスマートフォンメーカーOnePlusの責任者は「買い替えを考えているなら急いだ方がいい」と消費者に警告したした。Appleのティム・クックCEOも決算発表で「6月以降、メモリーコストが事業に与える影響は増大する」と発言しており、2024年9月に発表が見込まれる新型iPhoneの値上げを示唆した形だ。

日本の関連性

日本のPCメーカーやスマートフォンメーカーは、DRAM価格高騰によるコスト増に直面する。特に、汎用的なDDR4 16GBメモリーが半年で200%〜340%上昇したこと、そしてサムスンがDDR4の生産比率を20%以下に削減したことは、日本市場におけるPCやスマートフォンの値上げを不可避にするだろう。例えば、富士通やNECといったPCメーカーは、レノボやデル、HPが最大20%の値上げを顧客に通知したように、同様の価格転嫁を迫られる可能性が高い。

また、DDR4の品薄と価格高騰は、既存のITインフラを運用する日本企業にも影響を及ぼす。サーバー用の64GB RDIMMメモリーが2023年第4四半期の約450ドルから2024年第1四半期には900ドル超へと倍増したことは、データセンターを運用する企業や、旧世代のサーバーを使い続ける中小企業にとって、維持コストの急増を意味する。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進におけるIT投資計画の見直しを迫る要因となる。

さらに、Appleのティム・クックCEOがメモリーコストの増大に言及したように、日本市場で大きなシェアを持つiPhoneの新型モデルも値上げされる可能性が高い。これにより、消費者の買い替えサイクルに影響を与え、国内の家電量販店や通信キャリアの販売戦略にも変更を促すだろう。