中国の主に航空会社は、メーデー(労働節)の大型連休を前に、オンライン旅行会社(OTA)などでの航空券の不正販売に対する管理体制を大幅に強化した。中国国際航空や中国南方航空などが、違反した代理店に対し航空券1枚あたり2万元(約43万円)の罰金を科す通達を発したことが、複数の現地メディアの報道で明らかになった。航空券市場の透明性を高め、価格体系を乱す不正な販売手法を根絶する狙いだ。
航空各社、代理店管理を強化
中国国際航空(エアチャイナ)、中国南方航空、中国東方航空、海南航空などの主に各社は、3月下旬から4月下旬にかけ、代理店向けに通知を一斉に発出した。通知では、自社が認可していないOTAや第三者プラットフォームへの航空券供給を禁止。違反が確認された場合、航空券を供給した代理店とOTAプラットフォームの双方に罰金が科される。
さらに悪質なケースでは、該当路線の販売停止や代理店資格の剥奪といった、より厳しい処分も辞さない構えを示している。これは、航空会社が価格決定の主導権を取り戻し、自社の直販チャネルを強化するための強力な措置とみられる。
OTAの役割と構造的課題
長年、中国の航空券市場は「代理店販売が約7割、航空会社直販が約3割」という構造が続いてきた。OTAは消費者が航空券を購入する主にな窓口となっているが、流通する航空券の多くは航空会社から直接ではなく、多数の代理店を経由して供給されている。
航空会社側は、一部の代理店が航空券を不当に安くOTA上で再販し、正規の価格体系を乱す行為を問題視してきた。特に、旅行プラットフォーム大手の「Qunar(チューナー、Qunar(去哪儿))」については、消費者を誘導するために実態のない割引情報を述べたするなどの手法が指摘されており、その販売手法の健全性に疑問が呈されていた。
市場への影響と「提直降代」政策の強化
今回の厳格な措置は、航空券市場における「提直降代」(直販推進・代理店手数料引き下げ)政策の、約10年越しの強化策と位置づけられる。手数料収入の低下や規制強化、コンプライアンス費用の増大により、中小の航空券代理店は事業モデルの転換を迫られている。
OTA側も、代理店からの格安航空券の供給が制限されることで、品揃えが減少し、価格競争力が低下する可能性がある。航空会社が顧客との直接的な関係構築を目指す一方、OTAは販売量を確保するため、市場のパワーバランスは新たな局面を迎えている。
日本への影響と示唆
今回の中国航空会社のOTAに対する罰金導入は、日本企業にとって直接的な影響と新たな事業機会の両方をもたらす。まず、日本の航空会社が中国路線を運航する際、中国国内のOTA経由の販売戦略を見直す必要が生じる。中国国際航空などが航空券1枚あたり2万元の罰金を科す通達を発したように、中国当局の直販強化の姿勢は明確であり、日本の航空会社も中国国内での直販チャネル構築を加速させなければ、販売機会の逸失や予期せぬ罰則に直面するリスクがある。
次に、日本の旅行代理店やOTAが中国市場向けに航空券を販売する際、Qunarのような中国大手OTAの動向に左右される可能性が高まる。中国航空会社が代理店経由の不正販売を厳しく取り締まることで、日本の代理店が中国の正規代理店から仕入れる際の条件が厳格化したり、仕入れ自体が困難になるケースも想定される。これにより、中国への団体旅行やパッケージツアーを企画する日本の旅行会社は、航空券の確保において新たなサプライチェーン戦略を構築する必要に迫られるだろう。
最後に、中国航空市場における「提直降代」政策の強化は、日本のIT企業やコンサルティング企業にとって、中国航空会社の直販システム構築や顧客データ管理に関するソリューション提供の好機となる。中国の航空会社が顧客との直接的な関係構築を強化する中で、先進的なデジタルマーケティングやCRM(顧客関係管理)システムの需要が高まるため、日本の技術力やノウハウが活かせる分野が生まれる可能性がある。