TikTokを運営する中国のByteDanceが、ゲーム事業部門の売却に向けてサウジアラビアのSavvy Games Groupと交渉を進めていることが明らかになった。売却額は約60億〜70億ドル(約9,400億〜1兆900億円)に上る見込みで、事業の選択と集中を加速させる狙いだ。

主力ゲーム開発子会社を売却

売却対象の中心は、2021年に買収したゲーム開発会社「ムーントン・テクノロジー(Moonton Technology)」だ。同社は、東南アジアを中心に絶大な人気を誇るモバイルゲーム『Mobile Legends: Bang Bang』の開発元として知られる。

複数の関係者によると、ByteDanceはサウジの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」傘下のSavvy Games Groupと交渉を進めている。売却額は約60億〜70億ドルと見られているが、交渉は最終合意に至っていない。

テンセント出身者が創業、戦略転換へ

ムーントン・テクノロジーは2014年、テンセント出身の徐振華氏と袁菁氏が上海で設立した。当初から海外市場をターゲットとし、2016年にリリースした『Mobile Legends: Bang Bang』が東南アジアで爆発的なヒットを記録した。

ByteDanceはゲーム事業強化のため、2021年にムーントンを約40億ドルで買収した。しかし、中国国内のゲーム市場の規制強化や競争激化を受け、ByteDanceは中核事業であるショート動画プラットフォームへのリソース集中を図る戦略に転換した。この動きは、中国のテクノロジー大手各社が事業ポートフォリオを見直す大きな流れの一環だと、ロイター通信は報じている。

まとめ:日本への示唆

ByteDanceが主力ゲーム部門をサウジアラビアのSavvy Games Groupに売却する動きは、日本のゲーム産業にとって直接的な競争環境の変化をもたらす。まず、東南アジアで絶大な人気を誇る『Mobile Legends: Bang Bang』の開発元であるムーントンがサウジ資本傘下に入ることで、同地域での日本ゲーム企業の競争戦略は再考を迫られる。サウジPIFの潤沢な資金力が、ムーントンのマーケティングや新規タイトル開発に投じられれば、日本のモバイルゲームが同地域でシェアを拡大する際の障壁となり得る。

次に、ByteDanceが約60億〜70億ドル規模のゲーム事業売却を通じて、ショート動画プラットフォームへのリソース集中を図ることは、日本企業にとって新たな協業機会を生む可能性がある。ByteDanceがゲーム開発・運営から手を引くことで、日本のゲーム開発会社がTikTokなどのプラットフォームを活用したプロモーションや、共同開発のパートナーシップを模索する余地が広がる。特に、中国国内のゲーム市場規制強化により、日本市場への関心が高まっている中国のゲーム開発会社との連携も視野に入る。

最後に、PIFがゲーム分野への投資を加速させていることは、日本のゲーム企業が新たな資金調達先や、中東市場への進出機会を得る可能性を示唆する。PIFはすでにSNKなど日本のゲーム企業にも投資実績があり、Savvy Games Groupを通じたさらなる日本企業への投資や、中東地域での共同事業展開の可能性も考えられる。これは、日本のゲームコンテンツが新たな市場と資本を得る機会となりうる。