中国文物報社などは2024年3月下旬、「2023年度全国考古学10大発見」を発表した。従来の定説を覆す紅山文化の遺跡や8000年前の酒造技術の証拠が発見され、中国古代文明の多様性を浮き彫りにする成果が相次いだ。これらの成果は、中国考古学界における一年間の研究を総括するものだ。
長白山に独自の「黒曜石文化圏」を確認
吉林省東部の長白山地域では、10万平方キロメートルを超える大規模な調査が実施された。この調査により、約22万年前から1万3000年前にかけての旧石器時代の文化の変遷が初めて明らかになった。中国社会科学院の陳星燦研究員は「長白山が古代人類の安定した活動拠点であったことが証明された」と語る。
この地域の最大の特徴は、火山活動で生成された黒曜石を原料とする、中国国内では他に類を見ない石器製作技術体系の存在が明らかになった点だ。他地域から持ち込まれた黒曜石も発見されており、東北アジアにおける先史時代の広域な交流ネットワークの存在を示す重要な手がかりとなる。
8000年前の美意識と最古の酒造技術
河南省の裴李崗(はいりこう)遺跡では、旧石器時代から新石器時代への移行期を探る上で重要な発見があった。特に注目されるのは、ダチョウの卵の殻で作られたビーズや染色痕跡で、当時の人々の「美意識の芽生え」を物語っている。また、約8000年前の地層からは、牙を持つ神のような顔をかたどった最古級の人面土偶が発見された。
さらに、赤く焼いた土を用いた最古の家屋跡や、紅曲カビを利用した最古の酒造技術の証拠も見つかった。中国文物報社によると、専門家は「酒器を副葬する習慣はこの時期に定着し、後世に大きな影響を与えた」と指摘しており、先史時代の精神文化を解明する上で貴重な資料となる。
紅山文化の定説覆す南下の証拠
河北省張家口市の鄭家溝遺跡では、約5300年〜4800年前の紅山(こうさん)文化の典型的な積石塚が発見された。この発見は、紅山文化の分布が従来考えられていた核心地域から数百キロ南西にまで及んでいたことを示し、学界の定説を覆すものとなった。
北京大学の趙輝教授は「河北省北部は紅山文化の『辺境』から、後期における重要な分布域、あるいは地域的中心へと位置づけが変わった」と述べる。遺跡からは紅山文化特有の玉器と共に、中原の廟底溝(びょうていこう)文化の特徴を持つ彩陶も出土。「遼西の龍(玉器)」と「中原のバラ(彩陶)」の出会いは、この地が文化交流の結節点であったことを裏付けている。
日本企業への示唆
今回の「2023年度全国考古学10大発見」は、日本企業にとって新たな文化ツーリズムの機会を提供し得る。特に、長白山地域で確認された約22万年前からの黒曜石文化圏は、東北アジアにおける先史時代の広域な交流ネットワークの存在を示唆する。これは、日本の縄文文化との関連性、例えば北海道や東北地方の黒曜石産地との交易ルートの解明に繋がる可能性を秘めている。日本の旅行会社は、中国の考古学研究機関と連携し、長白山と日本の黒曜石産地を結ぶ「古代交流ルート」をテーマとした文化体験ツアーを企画することで、新たな富裕層顧客層を開拓できるだろう。
また、河北省張家口市の鄭家溝遺跡で発見された紅山文化の南下を示す積石塚は、約5300年〜4800年前の東アジアにおける文化交流のダイナミズムを再評価するきっかけとなる。この「遼西の龍」と「中原のバラ」の出会いは、当時の人々が広範囲に移動し、異なる文化が融合していたことを物語る。日本の博物館や研究機関は、中国の考古学界と共同で、東アジア古代文明における文化伝播の国際共同研究プロジェクトを立ち上げることで、学術的貢献だけでなく、両国の文化交流を深化させる機会を得られる。これは、日中の歴史認識に関する対話を促進する一助ともなり得る。