米国の厳しい輸出規制を受け、中国の半導体産業が岐路に立たされている。先端半導体の国産化は停滞を余儀なくされる一方、政府主導の巨額投資を背景に、自動車や家電などに使われる成熟(レガシー)半導体の分野で生産能力を急拡大。制裁を逆手に取り、世界市場での新たな活路を見いだそうとしている。
米国の制裁強化と先端分野での苦戦
米国政府は安全保障上の脅威を理由に、中国に対する半導体関連の輸出規制を段階的に強化してきた。特に、オランダASML製のEUV(極端紫外線)露光装置など、7ナノメートル(nm)以下の先端プロセスに不可欠な製造装置の禁輸措置は、中国の半導体最大手SMIC(中芯国際集積回路製造)やメモリー大手のYMTC(YMTC科学技術)といった企業の先端技術開発に大きな打撃を与えている。
これにより、中国国内での最先端ロジック半導体や高性能メモリーの量産計画は大幅な遅延を強いられているのが現状だ。スマートフォンやAIサーバーに搭載される高性能半導体の国産化は、依然として高い壁に直面している。
成熟プロセスでの躍進と国産化への挑戦
一方で、中国は28nm以上の成熟プロセス分野に活路を見いだしている。中国政府が設立した「国家集積回路産業投資基金」などを通じて国内メーカーに巨額の資金を投下し、生産能力の増強を強力に後押ししている。2024年末までに、中国は成熟プロセス向けの半導体工場を30以新商品投入設する計画だと報じられている。
これらの工場で生産される半導体は、電気自動車(EV)や産業機器、IoTデバイスなど幅広い製品に不可欠であり、世界的な需要も根強い。新華社通信によると、中国は半導体製造装置や材料の国内サプライチェーン構築も急いでおり、米国への技術依存からの脱却を国家戦略として推進している。
日本への影響
中国がレガシー半導体で生産能力を急拡大させる動きは、日本の自動車産業や産業機械メーカーに直接的な影響を及ぼす。中国が2024年末までに成熟プロセス向けの半導体工場を30以上新設する計画は、世界的な半導体供給網における中国のプレゼンスを一層高めることを意味する。これにより、これまで日本企業が調達してきたレガシー半導体の価格競争が激化し、部品コストの低下につながる可能性がある。特に、自動車向け半導体は成熟プロセスが主流であり、中国製半導体の台頭は、トヨタやホンダといった日本の完成車メーカーのサプライチェーン戦略に再考を促す。
一方で、中国の半導体国産化推進は、日本の半導体製造装置メーカーや材料メーカーにとって新たなリスクと機会を生む。中国が米国への技術依存からの脱却を国家戦略とする中で、東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった日本の主要装置メーカーは、先端プロセス向け輸出規制の影響を受けつつも、成熟プロセス向け装置の需要増加という恩恵を受ける可能性もある。しかし、中国が国内サプライチェーン構築を急ぐことで、将来的には日本からの輸入を抑制する動きに転じる懸念も存在する。このため、日本企業は中国市場における製品ポートフォリオの最適化と、代替市場の開拓を並行して進める必要がある。