米国の厳しい輸出規制を受け、中国が半導体産業の技術的自立と国産化を国家戦略の柱に拠えている。国家集積回路産業投資基金(大基金)などを通じた巨額の資金を投じ、国内サプライチェーンの構築を急ぐが、先端分野では依然として欧米や日本との技術格差が横たわる。
激化する米国の対中半導体規制
米国政府は安全保障上の懸念を理由に、中国に対する半導体関連の規制を段階的に強化してきた。特に、中国の半導体受託製造(ファウンドリ)最大手である中芯国際集積回路製造(SMIC)などを事実上の禁輸リストである「エンティティリスト」に追加。これにより、米国の技術を用いた先端半導体の製造装置や設計ソフトウェア(EDA)の輸出が厳しく制限されている。
この規制は、中国企業がスマートフォンの高性能プロセッサーやAI(人工知能)向け半導体など、最先端分野の製品を開発・製造する上で大きな障壁となっている。中国の半導体産業は、技術導入と部品調達の両面で深刻な困難に直面しているのが現状だ。
国家主導で進む「半導体強国」への道
米国の制裁に対し、中国政府は国内半導体産業の育成を最重要課題と位置づけ、官民一体で対応を加速させている。2014年に設立された「大基金」は、これまでに総額数兆円規模の資金を国内の半導体設計、製造、素材、装置メーカーに投じてきた。
こうした強力な後押しを受け、SMICやYMTC科学技術(YMTC)といった国内大手企業は、成熟プロセス分野での生産能力拡大や技術開発を推進。ブルームバーグの報道によると、ファーウェイ(ファーウェイ技術)はSMICの技術を用いて7ナノメートルプロセスの半導体を製造するなど、一部では制裁を乗り越える動きも見せ始めている。
日本の関連性
中国の半導体国産化戦略は、日本企業に新たな事業機会とリスクをもたらす。まず、中国が「大基金」を通じた巨額投資で国内サプライチェーン構築を急ぐ現状は、日本の素材・装置メーカーにとって追い風となる。特に、米国が規制する先端製造装置や設計ソフトウェア(EDA)以外の分野、例えばフォトレジストや高純度ガスといった素材、あるいはレガシープロセス向けの製造装置などでは、中国側の調達ニーズが拡大する。SMICが7ナノメートルプロセス半導体の製造に成功した事例は、中国が先端分野での国産化を諦めていない証拠であり、この動きは日本の特定技術を持つ企業に限定的ながらも商機を生む。
一方で、中国の半導体自立は、日本のエレクトロニクス産業、特にスマートフォンなどの最終製品メーカーにとって潜在的な脅威となる。中国がYMTCのようなメモリメーカーやSMICのようなファウンドリの技術力を向上させ、国産部品への切り替えを進めれば、日本の電子部品メーカーや半導体商社は、中国市場における既存のサプライチェーンから排除される可能性がある。これは、これまで中国市場を主要な輸出先としてきた日本企業にとって、売上減少に直結するリスクである。また、中国が国産化を加速させることで、将来的には日本市場への低価格な中国製半導体製品の流入も懸念され、国内産業の競争環境を激化させる可能性も孕む。