中国で年初から、銀行傘下の資産運用会社による商品手数料の引き下げが相次いでいる。低金利環境下で預金から投資商品への資金シフトが進む中、手数料を引き下げて顧客を呼び込み、市場シェア拡大を狙う動きが活発化している。
手数料引き下げで顧客獲得競争が激化
南京銀行傘下の資産運用会社はこのほど、一部の資産運用商品で固定管理手数料と販売手数料の引き下げを発表した。同時に、中原銀行も傘下の複数の資産運用商品で手数料を調整するなど、追随の動きが広がっている。
蘇商銀行の特別研究員である薛洪言氏は、多くの銀行や資産運用会社が一時的な手数料引き下げに動いていると指摘。投資家に利益を還元することで、年初の重要な時期に商品の魅力を高め、資金流入を促し市場シェア拡大を狙う戦略だと分析する。
預金シフトの受け皿、市場は32兆元規模に
現在の「預金シフト」が進む状況下で、手数料の引き下げは預金からの資金を受け入れるための重要な手段となっている。業界関係者によると、資産運用会社による手数料引き下げは、低金利環境下での競争激化が背景にある。顧客を引き付けて預金シフトの資金を取り込み、年初の好スタート(中国で言う「開門紅」)を切るための販売戦略でもあるという。
中国の銀行資産運用市場は急速に拡大しており、2023年第3四半期末時点で、市場には4万3900本の商品が存在し、前年同期比で10.01%増加した。運用資産残高は32兆1300億元(約650兆円)に達し、同9.42%増となった。このうち銀行傘下の資産運用会社が、市場全体の91.13%を占めている。
専門家「短期的な販売戦略」と分析
手数料引き下げの動きについて、専門家からは短期的な戦略との見方が出ている。中国社会科学院金融研究所の李広子主任は、手数料引き下げは全商品一律ではなく、特定の顧客や期間を対象に、的を絞って行うべきだと述べた。
前出の薛氏も、こうした優遇措置は通常、期間や条件が設定された短期的な販売戦略であり、恒久的な手数料改定ではないとの見方を示した。手数料競争が、各社の収益性を圧迫する可能性も指摘されている。
日本への影響と今後の展望
中国の銀行による資産運用商品の手数料引き下げは、日本の金融機関、特に中国市場で事業を展開する大手銀行や証券会社に直接的な影響を及ぼす可能性がある。まず、中国の低金利環境下での競争激化は、日本の金融機関が提供する資産運用商品の相対的な魅力度を低下させるリスクがある。例えば、中国の銀行資産運用市場が2023年第3四半期末時点で32兆1300億元(約650兆円)に達している巨大市場であることを踏まえると、手数料競争の激化は、日系金融機関の中国における収益機会を圧迫する。
次に、中国の銀行が「開門紅」戦略として手数料引き下げを短期的に利用している点は、日本の投資家が中国市場の資産運用商品を選択する際の判断基準に影響を与えかねない。短期的な「お買い得感」に惑わされ、実態を伴わない高リスク商品に資金が流入する可能性があり、日本の金融機関は顧客への適切な情報提供とリスク説明を強化する必要がある。
最後に、中国の銀行傘下の資産運用会社が市場全体の91.13%を占める圧倒的なシェアを持つ中で、南京銀行や中原銀行といった地場銀行が手数料競争の先鞭を切っていることは、日系金融機関が中国の富裕層向け資産運用ビジネスで差別化を図る上での課題となる。日系金融機関は、手数料以外の付加価値、例えば多様なグローバル投資機会の提供や、より高度なリスク管理能力を前面に出すことで、競争優位性を確立する必要がある。
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