中国の長江経済ベルトが、過去10年間で生態系の回復と経済成長を両立させる飛躍的な発展を遂げた。中国国営の新華社通信などが伝えたところによると、域内総生産(GRP)は2倍以上に増加する一方、長江本流の水質は大幅に改善し、環境と経済の好循環が生まれつつある。
生態系回復を最優先、水質が劇的に改善
この10年間、長江経済ベルトでは「生態優先、グリーン発展」の方針が徹底された。かつて67%だった優良水域の割合は 96.5% まで上昇。長江本流の水質は、2年連続で国家基準の「II類」を達成している。
背景には、汚染源への抜本的な対策がある。流域の約1万社に上る化学関連企業を対象に閉鎖、改善、移転、転換を進めたほか、1361カ所 の不法埠頭を撤去。地級市以上の都市では、ヘドロなどで黒ずみ悪臭を放つ汚染水域をほぼ解消した。さらに、生態系回復のため「長江10年禁漁」措置も実施されている。
産業構造の高度化と経済成長を両立
環境保護を優先する一方で、経済成長も著しい。長江経済ベルトの域内総生産は、この10年で2倍以上に増加した。これは、単なる規模拡大ではなく、産業構造の高度化を伴うものだ。
特に、自動車製造や電子情報、ハイエンド設備などの分野で世界レベルの産業クラスターが形成されつつある。また、沿岸に設置された9カ所の自由貿易試験区が、対外開放とイノベーションの拠点として機能。文化遺産の保護・活用や住民の生活環境の向上にも注力し、持続可能な発展モデルを追求している。
日本にとっての意味
長江経済ベルトにおける「生態優先、グリーン発展」の推進は、日本企業に直接的な影響を及ぼす。まず、同地域の水質が「II類」を2年連続で達成し、優良水域の割合が96.5%に達したことは、日本の水処理技術や環境関連企業のビジネスチャンスを限定する可能性がある。中国政府が自力での環境改善に成功している現状では、高度な技術を持つ日本企業であっても、かつてのような大規模なインフラ輸出は期待しにくい。
次に、化学関連企業約1万社の整理や不法埠頭1361カ所の撤去といった中国国内のサプライチェーン再編は、日系化学メーカーや物流企業に新たなリスクをもたらす。既存の取引先が閉鎖・移転の対象となることで、部品調達や製品供給網の再構築を迫られる企業が出てくるだろう。特に、長江流域に生産拠点を置く企業は、サプライチェーンの寸断やコスト増に直面する可能性が高い。
一方で、自動車製造や電子情報、ハイエンド設備分野での産業クラスター形成は、日系部品メーカーや素材メーカーにとって新たな市場機会を創出する。中国企業がこれらの分野で技術力を向上させる中で、高品質な中間財や特殊素材への需要が高まることが予想される。例えば、EVバッテリーや次世代半導体関連の部材供給において、日本の技術力が評価される余地は依然として大きい。ただし、中国側が内製化を進める可能性も高く、常に技術優位性を確保し続けることが求められる。