2025年、中国人民元が3年間の下落基調から反発に転じた。特に11月以降は上昇ペースが加速しており、海外投資家からは過小評価されているとの指摘も出ている。一方で、足元の元高は実需の増加よりも供給サイドの減少が主因との分析もあり、先行きは依然として不透明だ。
3年ぶりの反発と市場の見方
人民元は2023年7月から2025年2月まで長期的な下落基調にあったが、2025年に入り回復。特に11月以降の上昇は急激で、12月には対ドルで一時1ドル=7元の大台を回復した。海外投資家の間では、現在の人民元レートは中国経済の実力に比べて過小評価されており、2026年にかけてさらに上昇する余地があるとの予測が広がっている。
国内市場からも、人民元の再評価が中国資産全体の見直しにつながるとの期待が聞かれる。新華社通信によると、当局は為替レートの安定を重視する姿勢を強調している。
需給データから見る元高の背景
為替需給を見ると、2025年3月から11月までの累計で、銀行の顧客による外貨の売り越し額(元買いを超える)は2733億ドルに達した。しかし、月別の動向を見ると、11月の銀行による外貨決済ベースでの売り越し額は297億ドルと、9月の734億ドルから大幅に減少している。
このデータは、最近の元高が旺盛な需要に支えられたものではなく、むしろ外貨買い(元売り)需要が後退したことによる供給サイドの要因が大きいことを示唆している。市場の実需が力強さを欠いている可能性が指摘される。
実質実効為替レートと今後の展望
国際決済銀行(BIS)が算出する人民元の実質実効為替レート(REER)は、2022年3月をピークに下落傾向が続き、2025年11月までに16.7%下落した。このREERの下落を根拠に、人民元が割安だとする見方がある。
しかし、専門家は、REERの下落が必ずしも為替レートの過小評価を意味するものではないと指摘する。銀行の顧客による外貨売却(元買い)比率を見ると、2025年11月は52.0%と10月から2.1ポイント低下しており、元買い意欲がやや後退している兆候も見られる。2020年12月時点のデータと比較すると、当時の市場の元買い需要は現在よりも高水準だった。
日本への影響
人民元の対ドルでの急反発は、日本企業にとって二つの明確な影響をもたらす。まず、中国市場で事業を展開する日本企業、特に自動車部品や電子部品を輸出する企業は、元高によるコスト増に直面する。例えば、トヨタやソニーといった中国に生産拠点を持つ企業は、現地で調達する部品や人件費がドル換算で上昇し、収益性が圧迫される可能性がある。
次に、人民元建て資産への投資妙味が増す。中国経済の減速懸念が払拭されれば、日本からの対中直接投資や証券投資が再び活発化する可能性がある。特に、2025年3月から11月までの累計で銀行の顧客による外貨の売り越し額が2733億ドルに達したという事実は、中国国内で元買い需要が根強いことを示唆しており、人民元建て債券や株式への資金流入が期待される。
ただし、足元の元高が実需ではなく供給サイドの減少が主因であるという分析は、日本企業にとって慎重な判断を促す。中国経済のファンダメンタルズが改善した結果ではない場合、元高は一時的なものに終わるリスクがある。例えば、中国から日本への観光客の減少や、日本製品の中国での販売不振が続けば、元高の恩恵は限定的となる。したがって、日本企業は、為替レートの変動だけでなく、中国国内の消費動向や産業政策の変化を複合的に分析し、事業戦略を再構築する必要がある。