上海交通大学医学院附属新華病院の郝思国・血液科学科長によると、新薬の導入以降、2024年と2025年で計11人の外国人患者が治療のため同院を訪れる。中国では、がんや心血管疾患などの難病治療を目的とした外国人患者が増加しており、医療ツーリズム市場が拡大している。
高度医療を求め世界から患者が渡航
上海交通大学医学院附属新華病院では、国家薬品監督管理局(NMPA)が承認した新薬の導入後、外国人患者の受け入れが進んでいる。郝思国・血液科学科長によると、2024年に4人、2025年には7人が治療を受ける予定だ。これまでに計11人の外国人患者が治療のために同院を訪れているという。
渡航理由は多岐にわたる。中東からの患者は米国の医師の紹介で、ポーランドの患者家族は国際的な医療データベースで上海の病院が持つ心臓胸部外科の先進性を知り、治療のために訪中した。取材によると、がんや心血管疾患、神経系疾患といった難病の治療が、外国人患者が中国を選ぶ主な理由となっている。
活況を呈する漢方医学ツーリズム
中国伝統の漢方医学(中医学)も、外国人患者を惹きつける要因の一つだ。中国中医科学院広安門病院の劉馨雁・国際医療部長によれば、同院ではがんや心血管疾患、内分泌代謝疾患、リウマチ・免疫疾患などの治療で漢方医学を求める外国人が多いという。
国境の町である黒竜江省綏芬河市では、ロシア人が首や腰の痛みを治療するために漢方医学の施術を受けている。また、リゾート地として知られる海南省三亜市にある漢方医学の病院では、外国人が治療や健康増進を目的としたウェルネスツーリズムに参加するなど、多様な需要が生まれている。
まとめ:日本への示唆
中国の医療ツーリズム拡大は、日本の医療機関にとって競合となり得る。特に、上海交通大学医学院附属新華病院がNMPA承認の新薬導入で外国人患者を誘致している点は注目に値する。これまで日本が強みとしてきた先端医療分野において、中国が国際的な医療データベースを通じてポーランドからの患者を獲得しているように、情報発信力と治療実績の向上により存在感を増している。
一方で、漢方医学ツーリズムの活況は、日本の伝統医療やウェルネス分野における新たな市場開拓のヒントを与えている。海南省三亜市でのウェルネスツーリズムのように、医療と観光を組み合わせたパッケージは、富裕層や健康志向の高い外国人観光客を惹きつける可能性がある。日本も温泉地や伝統医療を活かした「メディカルツーリズム」を深化させることで、新たな需要を取り込む余地がある。
ただし、中国の医療ツーリズムが拡大する中で、日本は自国の医療サービスの質だけでなく、国際的な情報発信や多言語対応、ビザ取得の簡素化など、外国人患者が日本を選びやすい環境整備を急ぐ必要がある。特に、がんや心血管疾患といった難病治療を求める層は、治療効果だけでなく、滞在中の利便性や安心感も重視するため、包括的なサービス提供が求められる。