中国経済が大きな転換点を迎える中、国内の主に企業の動向がその構造変化を映し出している。火鍋チェーン最大手のHaidilao(海底撈)インターナショナル(Haidilao)、不動産大手・万科(ワンコー)企業(Vanke)創業者の王石氏、香港・マカオを拠点とするコングロマリットの信徳集団(Shun Tak Holdings)。これら3者の戦略から、中国経済の現在地と今後の行方が見えてくる。

Haidilao(海底撈)、国内の苦戦と海外事業への活路

中国の火鍋チェーン最大手、Haidilao(海底撈)インターナショナルは、国内市場での過当競争と新型コロナウイルス禍の影響で深刻な業績不振に直面している。同社は大規模な不採算店舗の閉鎖に踏み切るとともに、創業者である張勇氏がCEOを退任し、経営体制を刷新した。

こうした中、新たな成長戦略の柱として海外事業の強化を急いでいる。同社は中華圏以外の海外事業を統括する「Super Hi International Holding」を分社化(スピンオフ)し、香港証券取引所への上場を計画していると報じられた。国内市場の成長鈍化を受け、成長の軸足を海外市場へ移す動きが鮮明になっている。

万科(ワンコー)創業者・王石氏、不動産不況に「背水の陣」

中国経済の重しとなっている不動産不況について、業界の象徴的な人物が発した警鐘が波紋を広げている。不動産開発大手、万科(ワンコー)企業の創業者である王石氏は、現在の不動産市場の状況を「背水の陣」と表現し、業界全体が極めて厳しい局面にあるとの認識を示した。

同氏はすでに経営の第一線から退いているものの、中国の企業家精神を体現する存在として依然として大きな影響力を持つ。その重鎮からの厳しい現状認識は、不動産セクターの危機が根深く、短期的な回復は困難であることを市場に改めて印象付けた。

信徳集団、不動産依存からの多角化を加速

香港・マカオを拠点とし、不動産や運輸、ホスピタリティ事業を手がける信徳集団も、事業ポートフォリオの再構築を迫られている。同社はマカオの「カジノ王」スタンレー・ホー氏一族が経営の中核を担うが、中国本土と香港の不動産市況の悪化が直撃している。

これを受け、不動産事業への依存度を引き下げ、運輸やホスピタリティといった非不動産事業を強化する動きを加速させている。ゼロコロナ政策の終了後、マカオへの観光客が回復基調にあることを追い風に、事業の多角化を通じて収益基盤の安定化を図る戦略だ。

まとめ:日本への示唆

Haidilao(海底撈)が中華圏以外の海外事業を統括するSuper Hi International Holdingを分社化し、香港証券取引所への上場を計画していることは、日本企業にとって中国市場の再評価を促す。これまで中国を単一の巨大市場と捉えていた企業は、Haidilaoのように国内消費の減速から海外展開を加速する中国企業の動向を注視し、中国市場の細分化と競争激化に対応する必要がある。特に、外食産業や小売業で中国展開を模索する日本企業は、中国国内の過当競争を避け、Haidilaoが狙う東南アジアなど第三国市場で中国企業と競合する可能性を考慮すべきだ。

また、万科(ワンコー)創業者の王石氏が不動産市場を「背水の陣」と表現したことは、日本の建設・不動産関連企業にとって、中国の不動産市場への過度な期待を修正する契機となる。中国国内の不動産開発プロジェクトへの投資や資材供給を検討する日本企業は、短期的な回復が困難であるという王氏の警鐘を真摯に受け止め、リスク評価を厳格化すべきだ。

さらに、信徳集団が不動産依存からの多角化を加速していることは、日本企業が中国経済の構造変化を捉え、新たなビジネス機会を模索する上で示唆に富む。特に、マカオの観光客回復を追い風に非不動産事業を強化する動きは、日本の観光・ホスピタリティ産業にとって、中国本土ではなく香港・マカオを介したビジネス展開の可能性を示唆する。例えば、日本のホテルチェーンや旅行会社は、信徳集団のような香港・マカオのコングロマリットとの連携を通じて、中国本土からの富裕層や観光客を誘致する新たなチャネルを構築できる可能性がある。