中国でヒューマノイドロボットを開発する新興企業3社が、相次いで株式公開(IPO)に向けた準備を開始したことが明らかになった。清華大学発の「星海図AI」、深圳拠点の「衆擎ロボティクス」、元シャオミ幹部が設立した「マジック・アトム」の3社で、技術開発と事業拡大を加速させるための資金調達を目指す。
清華大発など新興3社、上場で主導権争いへ
清華大学発のスタートアップである星海図AI(Xinghai AI)は、同大学電子工学部出身の高継揚氏がCEOを務める。同社はフルサイズの双腕ヒューマノイドロボット「R1」を開発しており、最近、商号を「星海図(北京)AI科学技術」に変更し株式会社へ移行した。これはIPOに向けた準備の一環とみられる。
深圳を拠点とする衆擎ロボティクス(Zhongqing Robotics)は、物理実体を持つAI(エンボディードAI)に特化し、二足歩行ロボットの開発に注力する。創業者の趙同陽氏はロボット分野で長年の経験を持つ。同社も同様に株式会社への移行を完了しており、上場準備を進めていると、36Krなどの中国メディアが報じた。
マジック・アトム(Magic Atom)は2024年1月設立と後発ながら、創業者の呉長征(中国ロケットシリーズ)氏がシャオミのロボット部門元責任者であることから注目を集める。同社は、中国中央テレビ(CCTV)が放送する2026年の旧正月恒例番組の戦略的パートナーに選定されるなど、急速に頭角を現している。
国家戦略を追い風に開発競争が激化
中国政府はロボット産業を国家の戦略的分野と位置づけ、研究開発や実用化を強力に後押ししている。今回明らかになった新興3社のIPOに向けた動きは、この国家戦略を背景とした開発競争の激化を象徴する。株式市場からの資金調達により、各社は研究開発体制の強化、優秀な人材の獲得、量産体制の構築を急ぐとみられる。
ヒューマノイドロボットは、製造業やサービス業における労働力不足を補う解決策として期待される。市場の主導権を巡る競争は今後さらに激化する見通しで、今回のIPO競争は中国のロボット産業が新たな成長段階に入ったことを示している。
日本への影響と今後の展望
中国のヒューマノイドロボット新興3社がIPO準備を開始したことは、日本の部品メーカーにとって具体的な商機とリスクをもたらす。まず、星海図AI、衆擎ロボティクス、マジック・アトムといった企業が資金調達を進めることで、高性能なアクチュエーター、センサー、精密減速機といった基幹部品の需要が急増する。特に、二足歩行ロボット開発に注力する衆擎ロボティクスや、シャオミ元幹部が設立したマジック・アトムのような後発ながら急速に台頭する企業は、初期段階で信頼性の高い日本製の部品を採用する可能性が高い。これは、日本のサプライヤーが中国市場でシェアを拡大する絶好の機会となる。
一方で、中国政府の強力な支援を受けたこれらの企業が、株式市場からの資金調達で研究開発を加速させることは、将来的に部品の国産化を推進するリスクも孕む。例えば、マジック・アトムが2024年1月設立と後発ながらCCTVの戦略的パートナーに選定されるなど、国家的な後押しが国産サプライチェーン構築を加速させる可能性は高い。日本の部品メーカーは、単なる部品供給に留まらず、中国企業との共同開発や技術提携を通じて、知的財産の保護と市場における優位性を確保する必要がある。また、中国のヒューマノイドロボットが普及することで、将来的には日本の製造業やサービス業における労働力不足解消の選択肢として、中国製ロボットが輸入される可能性も考慮すべきである。