中国の習近平総書記は2025年7月14日、中央都市業務会議で演説し、同国の都市開発が「高速成長期から安定成長期へ」の転換点を迎えたとの認識を示した。今後は都市の規模拡大よりも、機能の充実やガバナンスの高度化、環境への配慮を重視する「質の高い発展」を目指す方針だ。
40年で都市化率3.7倍、成長の限界も
改革開放政策が始まって以来、中国の都市開発は世界で最も速いペースで進んできた。新華社通信によると、過去40年間で常住人口における都市化率は18%から67%へと約3.7倍に上昇。都市で暮らす人口は1億7000万人から9億4000万人へと急増した。都市は経済や社会活動の中心として国家の発展を牽引してきたが、一方で急速な拡大に伴う課題も顕在化している。
習氏が示す「質の向上」への転換
習氏は演説で、これまでの都市人口の急速な集中と市街地の外延的な拡大を基調とした開発モデルからの転換を促した。具体的には、「機能の充実度、ガバナンスの高度化、生態環境の快適性、イノベーションの活力」を新たな目標として掲げ、これらを体系的に向上させる必要があると強調した。これは、都市開発が新たな段階に入ったという認識の表れだ。
「中国の特色ある都市現代化」の道筋
習氏が示した新方針は、今後の中国における都市開発の道筋を定めるものだ。量の拡大から質の向上へと舵を切り、構造の最適化を目指す。各都市は、機能性、ガバナンス、環境、イノベーションといった要素を有機的に融合させることが求められる。これにより、「中国の特色ある都市の現代化」という新たな道を歩み出すことになる。
日本にとっての意味
習近平総書記が中央都市業務会議で示した「質の高い発展」への転換は、日本企業にとって事業戦略の見直しを迫る。特に、これまでの中国都市開発で恩恵を受けてきた建設機械メーカーや建材メーカーは、需要構造の変化に直面する。過去40年間で都市人口が1億7000万人から9億4000万人へと急増した時期のような、量的な拡大を前提としたビジネスモデルは通用しない。
しかし、これは新たな機会も生む。例えば、都市の「機能の充実度、ガバナンスの高度化、生態環境の快適性、イノベーションの活力」が新たな目標とされたことで、環境技術、スマートシティ関連技術、都市インフラの維持管理ソリューションを提供する日本企業には需要が生まれる。具体的には、大気汚染対策や水処理技術を持つ栗田工業や、都市のデジタル化を推進するNECのような企業は、中国の「中国の特色ある都市現代化」において、技術パートナーとしての役割を強化できる。
また、ガバナンスの高度化は、都市運営における透明性や効率性の向上を意味し、日本企業の現地法人運営におけるリスク低減に繋がる可能性がある。一方で、イノベーションの活力が強調されたことで、中国国内での技術開発競争が激化し、日本企業はより一層、独自技術や差別化戦略の確立を求められる。これらの変化は、単なる市場規模の縮小ではなく、ビジネスの質的転換を促すものであり、日本企業はこれまでの成功体験から脱却し、新たな価値提供モデルを構築する必要がある。