2025年度の中国におけるベンチャーキャピタル(VC)・プライベートエクイティ(PE)市場で、新規ファンドの設立数と資金募集額がともに前年比で25%以上増加したことが、業界団体の調査で明らかになった。募集総額は3兆860億元(約66兆円)に達し、特に政府系の資金が半導体や人工知能(AI)などの戦略的分野へ重点的に投じられている。

市場規模は3兆元超に

2025年度に中国で新たに設立されたVC/PEファンドは6,127件で、前年から27%増加した。資金募集額も同26%増の3兆860億元となり、市場の拡大が鮮明になった。地域別に見ると、ファンドの新規設立数では浙江省が1,367件で首位となり、江蘇省、広東省が続いた。沿海部の経済先進地域に資金とプロジェクトが集中する傾向が続いている。

政府系ファンドが投資を主導

投資家の内訳を見ると、投資件数ベースでは事業会社が最も活発で、全体の37.3%を占めた。一方、出資額ベースでは政府系の投資機関が最大のプレイヤーとなっており、全体の41.8%を占めている。政府指導基金(ガイダンスファンド)のリミテッド・パートナー(LP)としての市場シェアも17.6%に達しており、政府が民間資金をハイテク産業へ誘導する役割を担っていることがうかがえる。

半導体など重点分野へ資金集中

新たに設立された「国家創業投資指導基金」は、投資対象として集積回路(半導体)、AI、バイオ医薬品、量子テクノロジー、6G(次世代通信規格)、航空宇宙、次世代エネルギーなどを指定した。米中対立を背景に、中国政府が重要技術の国産化とサプライチェーン強化を国家戦略として推進しており、VC/PE市場の資金がその実現に向けた強力なエンジンとなっている構図だ。

日本市場への影響

中国VC/PE市場の急拡大は、日本企業にとって複数の具体的な影響をもたらす。まず、2025年度に募集総額が3兆860億元(約66兆円)に達したこの市場は、半導体やAIといったハイテク分野への政府主導の投資を加速させる。これにより、中国国内での技術開発力が飛躍的に向上し、特に半導体製造装置や素材分野で中国企業の競争力が強化される可能性がある。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった日本の主要半導体製造装置メーカーは、中国市場でのシェア維持・拡大に向け、より高度な技術サービスやカスタマイズ対応が求められるだろう。

次に、政府系の投資機関が全体の41.8%を占める出資額ベースの主導権は、中国が国家戦略として重要技術の国産化を推進していることを明確に示している。これは、例えば自動車産業において、日本のデンソーやアイシン精機のような部品メーカーが、中国国内でのサプライチェーン構築を加速させる中国企業との競合に直面するリスクを高める。一方で、中国の技術国産化の動きは、特定のニッチな高付加価値部品や素材において、日本企業が独自の技術力で差別化を図る機会も生み出す。

最後に、新たに設立された「国家創業投資指導基金」が指定する6Gや量子テクノロジーといった次世代技術分野への資金集中は、日本の研究開発機関やスタートアップとの連携機会を創出する可能性がある。中国企業がこれらの分野で国際的なパートナーシップを模索する際、日本の先進技術が評価されるケースも考えられる。しかし、技術流出のリスク管理はこれまで以上に厳格に行う必要がある。