中国のEC市場で、水を循環させて暖める新型の暖房器具「温水マット」が人気を集めている。大手ECサイト「Tmall(Tmall(天猫))」では3年連続で売上高が倍増する急成長を記録。従来の電気毛布にない快適性が消費者に支持され、新旧のブランドが入り乱れる活況を呈している。

快適性とスマート化で需要を獲得

温水マットは、本体ユニット内で加熱した水をマット内に循環させることで、一定の温度を保つ暖房器具だ。従来の電気毛布と比べて、火を使わず、電磁波も少ない。また、空気が乾燥しにくいため、就寝中も快適な湿度を保てる点が大きな特徴となっている。

価格帯は200元(約4,000円)から1,000元(約2万円)超と幅広い。上位機種では、スマートフォンのアプリと連携した遠隔操作や、睡眠サイクルに合わせた温度の自動調整機能などを搭載し、スマート化が進んでいる。

Tmallで市場急拡大、新興ブランドも台頭

Tmallのデータによると、温水マット市場は高い成長を続けており、3年連続で売上高が前年比100%以上の伸びを記録した。2023年末時点で、Tmallに出店する温水マットのブランドは200を超えている。

現在、市場シェアでは環鼎(Huanding)、栄事達(Royalstar)、彩虹(Rainbow)、米家(Mijia)、ハイアール(Haier)がトップ5を占める。一方で、米小舒(Mi Xiaoshu)やQ果(Q-Guo)といった新興ブランドも、Tmallでの年間売上高が1,000万元(約2億円)を突破するなど、急速に存在感を高めている。

ユーザー起点の商品開発で新分野へ

市場を牽引する一社である環鼎の創業者、呂海洋氏は、中国メディアの取材に対し「Tmallのフラッグシップストアを通じてユーザーからのフィードバックを収集し、製品開発に活かしている」と語った。同社は温水マットで培った技術を応用し、新たに床暖房マットの分野にも進出するなど、事業領域を拡大している。

結論:日本への示唆

中国の温水マット市場の急成長は、日本企業にとって二つの具体的な機会と一つのリスクを提示する。まず、Tmallで3年連続100%以上の売上増を記録し、ブランド数が200を超えるこの市場は、日本の家電メーカーにとって新たな販路開拓の機会となる。特に、スマート化が進む上位機種の価格帯が200元から1000元超と幅広いことから、日本の技術力とブランド力を活かした高付加価値製品の投入余地がある。例えば、シャープやパナソニックのような日本の大手家電メーカーは、中国市場で培ったIoT技術や省エネ技術を温水マットに応用し、差別化を図れる。

次に、環鼎が温水マットで培った技術を床暖房マットに応用しているように、中国企業が生活家電分野で新たな市場を創造し、技術を多角展開する動向は、日本企業との協業機会を生む。日本の部品メーカーや素材メーカーは、中国の急成長する家電市場向けに、温水マットやその派生製品に必要な高性能ポンプ、耐久性のあるチューブ、効率的な発熱体などの供給を検討できる。

一方で、米家(Mijia)や米小舒(Mi Xiaoshu)といったシャオミ系の新興ブランドがTmallで年間売上高1,000万元超を達成している事実は、中国企業がユーザーフィードバックを迅速に製品開発に反映させ、市場シェアを急速に拡大する能力を示している。これは、日本の家電メーカーが中国市場で競争する上で、製品開発サイクルやマーケティング戦略の抜本的な見直しを迫られるリスクを意味する。従来のブランド力だけに頼らず、中国消費者のニーズに合わせた柔軟な製品開発と迅速な市場投入が不可欠となる。