中国西部に位置する成都・重慶経済圏が、新たな成長エンジンとして急速に存在感を高めている。2020年に習近平国家主席が建設を指示して以来、域内総生産(GDP)は8.7兆元(約174兆円)に達した。特に自動車と新エネルギー分野での産業集積が進んでおり、中国経済の新たな核となりつつある。
習近平氏の号令で急成長する巨大経済圏
2020年、習近平国家主席は成都・重慶地区における「双城経済圏」の建設を推進し、質の高い発展を実現するための重要な方針を打ち出した。この決定から5年足らずで、同経済圏のGDPは6.3兆元から8.7兆元へと約38%増加した。
現在、中国全土で生産される自動車の7台に1台、車載電池の5個に1個以上がこの地域で生産されており、中国の製造業における重要拠点としての地位を確立している。
自動車産業のスマート化と集積
成都・重慶経済圏の自動車産業は、スマート化を軸に急速な発展を遂げている。成都経済技術開発区に拠点を置くLynk & Co(リンク・アンド・コー)の工場では、全工程のデジタル化とスマート化を実現した生産体制が構築されている。
成都市は2023年6月、新エネルギー車(NEV)とスマートコネクテッドカー産業の発展計画を発表。新華社通信によると、市は「双核六区多点」(2つの中核、6つのエリア、多数の拠点)とによるとする産業集積戦略を推進し、関連企業の誘致と育成を加速させる方針だ。
新エネルギー産業の最前線
新エネルギー分野でも、この地域は中国の最先端を走る。重慶市にあるSERES(セレス、中国名:SERES(賽力斯))のスーパーファクトリーは、中国西南地域のスマート製造能力を象徴する存在だ。
工場内では3000台以上のロボットが協調稼働し、AIを活用した画像検査システムがわずか十数秒で部品の数十カ所に及ぶ検査プロジェクトを完了させる。このような高度な自動化技術が、高品質な新エネルギー車の大量生産を支えている。
日本への影響と示唆
成都・重慶経済圏の急成長は、日本企業にとって二つの具体的な課題を突きつける。第一に、中国自動車市場における競争激化である。同経済圏で中国全土の自動車の7台に1台が生産され、特にNEVとスマートコネクテッドカーの集積が進むことで、日本メーカーは価格競争だけでなく、技術革新のスピードでも劣勢に立たされる可能性がある。例えば、SERESのスーパーファクトリーにおける3000台以上のロボット活用やAI画像検査システムといった高度な自動化は、生産効率と品質において日本企業の強みを脅かす。
第二に、サプライチェーン再編への対応が急務となる。同経済圏では車載電池の5個に1個以上が生産されており、この地域が中国国内の主要なバッテリー供給拠点となっている。日本企業が中国市場でNEV事業を展開する場合、この成長著しい地域での部品調達や現地生産の強化が不可欠となる。中国政府が「双核六区多点」戦略で産業集積を加速させる中、既存のサプライチェーンに固執すれば、コスト競争力や供給安定性で不利を被るリスクがある。日本企業は、この新たな成長極における現地パートナーシップの構築や、先端技術への投資を加速させることで、競争優位性を確保する必要がある。