中国の有人宇宙船「神舟(中国有人宇宙船)17号」の乗組員3名が、地上約400km上空の軌道を周回する宇宙ステーション「天宮(中国宇宙ステーション)」で春節(旧正月)を迎え、国民に向けて新年のメッセージを送った。中国有人宇宙事業弁公室(CMSA)が公開した映像で、3名は辰年にちなんだ抱負などを語った。
軌道上から新年のメッセージ
メッセージを送ったのは、湯洪波(タン・ホンボー)船長、唐勝傑(タン・ションジエ)飛行士、江新林(ジャン・シンリン)飛行士の3名。3名は2023年10月に「天宮(中国宇宙ステーション)」に到着し、約6カ月間の滞在ミッションを行っている。
湯船長は「宇宙で再び春節を迎えられて感慨深い。皆さんの願いが全てかない、幸多き一年になることを祈っている」と述べた。湯船長にとって、宇宙での年越しは2021年の神舟(中国有人宇宙船)12号ミッションに続き2度目となる。
初めて宇宙で春節を迎えた唐飛行士と江飛行士は、「特別な場所で特別な春節を過ごせることを誇りに思う」とコメント。「辰年は龍のように力強く飛躍し、それぞれの夢を実現させましょう」と国民に呼びかけたと、中国中央テレビ(CCTV)は伝えている。
宇宙での特別な春節
公開された映像では、乗組員がステーション内を赤い提灯や「福」の字が書かれた切り絵で飾り付け、春節を祝う様子が映し出された。彼らは餃子など特別な宇宙食を楽しみながら、地上にいる家族とビデオ通話で新年の挨拶を交わしたという。
宇宙ステーションでの生活は、微小重力環境下での身体への影響を防ぐため、科学実験や船外活動、体力トレーニングなど厳格なスケジュールで管理されている。こうした厳しい任務の合間に、乗組員は中国の伝統文化を宇宙で祝うことで、地上の人々と一体感を分かち合った。
日本の関連性
中国の宇宙開発は、単なる技術的進歩に留まらず、国家のソフトパワー戦略の一環として日本に具体的な影響を及ぼし始めている。まず、宇宙ステーション「天宮」で春節を祝う映像がCCTVを通じて世界に発信されたことは、中国の宇宙技術が実用段階に入り、長期滞在を可能にするレベルに達していることを示す。これは、日本の宇宙ビジネス、特に宇宙旅行や宇宙資源開発分野において、中国が先行者利益を享受する可能性を高める。例えば、日本の宇宙ベンチャーが中国と共同で宇宙インフラを構築する機会は限定的であり、競争激化は避けられない。
次に、湯洪波船長が「宇宙で再び春節を迎えられた」と述べたように、中国は有人宇宙飛行の経験を着実に積み重ねている。これは、将来的な月面基地建設や火星探査といった国際的な大型プロジェクトにおいて、中国が主導権を握る可能性を示唆する。日本は、JAXAや民間企業が培ってきた精密誘導技術やロボット技術を、中国以外の国際パートナーシップに積極的に活用し、独自のニッチ市場を確立する必要がある。
最後に、宇宙での春節祝いは、中国が宇宙を「人類共通のフロンティア」としてだけでなく、「中国のフロンティア」として位置づけていることを明確にする。これは、宇宙空間におけるガバナンスやルール形成において、中国が自国の文化や価値観を反映させようとする動きに繋がる。日本は、宇宙空間の平和的利用や持続可能性に関する国際的な議論において、中国の動向を注視し、多国間協力の枠組みを通じて日本の国益を主張していく必要がある。特に、宇宙ゴミ問題や衛星の安全保障に関する国際協調の重要性は増すだろう。