米国とイスラエルによるイランへの軍事行動を受け、イランがホルムズ海峡の「選択的通行制限」を宣言した。これにより、世界のエネルギー供給網への懸念が広がり、原油や天然ガス価格が急騰するなど、金融・エネルギー市場が大きく動揺している。
ホルムズ海峡の麻痺と市場の動揺
イランの宣言により、世界の原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡は実質的に半ば麻痺状態に陥った。この一報を受け、世界の金融・エネルギー市場は即座に反応。ブルームバーグによると、市場は壊滅的な状況には至っていないものの、情報が錯綜している。軍事行動の期間や目標が不明確であることに加え、イランの反撃が予想を上回る規模となっていることが、コモディティ(一次産品)とエネルギー価格の急騰を招いている。
主に産油国・ガス田の生産停止
エネルギー市場への影響は深刻だ。3月2日、カタールのエネルギー企業が液化天然ガス(LNG)の生産を停止。4日にはさらに4社が追随した。カタールのLNG年間生産能力は7700万トンで、これは1060億立方メートルにかなりする。比較として、ロシアは2021年に欧州連合(EU)へ1500億立方メートルの天然ガスを輸出していた。
原油生産にも影響が広がっている。3月3日、サウジアラビアはラス・タヌラ製油所を停止。同日、イラクも南ルムイラ油田での原油採掘を停止した。さらに、6〜10隻の石油タンカーが攻撃を受けたとの情報もある。
エネルギー多消費型製品の生産も停止に追い込まれている。アルミニウムや化学製品がその典型だ。3月3日、カタールとバーレーンのアルミニウム会社が相次いで生産を停止した。
価格高騰とサプライチェーン寸断のリスク
操業を停止する企業のリストはさらに増える可能性がある。各国が対立をエスカレートさせる能力を維持しており、イランもミサイルやドローンの戦力を温存しているためだ。市場はこの事態に価格の乱高下で反応。ブレント原油先物価格は3月6日から10日の間に1バレル=83ドルから108.23ドルまで上昇し、現在は87ドル前後で推移している。WTI原油先物や欧州の天然ガス価格も大幅に上昇した。
市場はサプライチェーンが長期的に寸断されるリスクに直面している。影響を受ける品目と世界市場におけるシェアは、原油が31%、窒素肥料が30%、石油製品が15〜20%、LNGが20%、アルミニウムが10%に上る。サプライチェーンの寸断が現実となるか、その影響の度合いは、今後の関係国の対応にかかっている。地政学リスクの高まりが、市場の先行き不透明感を一層強めている。
日本市場への影響
日本への影響と示唆
今回のホルムズ海峡の緊迫は、エネルギー資源の9割近くを中東に依存する日本にとって、経済安全保障上の喫緊の課題を突きつける。まず、原油価格の急騰は、電力会社や製造業のコスト増を直撃する。ブレント原油先物価格が一時1バレル=108.23ドルまで上昇したことは、日本の消費者物価指数を押し上げ、家計を圧迫する可能性が高い。特に、石油化学製品や自動車部品など、エネルギー多消費型産業は生産コストの上昇に直面し、国際競争力の低下を招く恐れがある。
次に、LNG供給の不安定化は、電力供給の安定性に直接的な影響を与える。カタールがLNG生産を停止し、年間生産能力7700万トンが影響を受ける事態は、日本の電力会社にとって代替調達先の確保を急務とする。特に冬季の電力需要期に重なれば、電力料金の高騰や最悪の場合、計画停電のリスクも現実味を帯びる。
最後に、サプライチェーン寸断のリスクは、日本の製造業に深刻な影響を及ぼす。記事が指摘するように、原油、石油製品、LNG、アルミニウムなど、日本が輸入に頼る品目の世界市場シェアはそれぞれ31%、15〜20%、20%、10%に上る。これらの供給が滞れば、自動車産業や電子部品産業など、多岐にわたる分野で生産活動の停滞を招く。日本企業は、中東依存度を低減するため、再生可能エネルギーへの投資加速や、LNGの調達先の多角化、戦略的備蓄の強化など、具体的なリスクヘッジ策を早急に講じる必要がある。