2026年初頭、世界の金属市場で価格高騰が続いている。1月14日時点で、銀のロンドン現物価格は1オンスあたり91ドルを突破、金のロンドン現物価格も同4640ドルに迫る勢いだ。ロンドン金属取引所(LME)では、3カ月物の錫(すず)と銅の価格がそれぞれ1トンあたり5万2000ドル1万3000ドルを超え、歴史的な高値圏で推移している。

リスク回避と実需が価格を牽引

業界専門家は、価格上昇の主な要因として、地政学リスクの高まりなどを背景とした市場の「安全資産への逃避(フライト・トゥ・クオリティ)」と、世界的な金融緩和への期待感を挙げている。実需面では、近年の世界的なインフレ懸念を背景に、多くの中央銀行が資産防衛のために金の保有量を増やしていることも、貴金属価格の強力な下支え要因となっている。

特に中国人民銀行(中央銀行)は、2025年12月末時点で公式の金保有量が7415万オンスに達し、14カ月連続で買い増している。この動きは、米ドルへの依存を減らす狙いもあるとみられ、市場の金需要を刺激している。

上昇基調は継続か、変動リスクに警戒も

市場では、金属価格の上昇基調は当面続くとの見方が優勢だ。ただし、短期的には価格の変動(ボラティリティ)が増大する可能性も指摘されており、投資家にはリスク管理が求められる。新華社通信によると、需給に関するファンダメンタルズ(基礎的条件)も価格を押し上げる重要な要因となっている。

特に銀市場では、太陽光パネルや電気自動車(EV)向けの産業需要が旺盛な一方、鉱山生産の伸び悩みから現物供給の逼迫が顕著だ。中国国内市場でも銀の在庫は減少傾向にあり、現物価格に上乗せされるプレミアムが大幅に上昇しているという。

日本への影響と示唆

今回の金属価格高騰は、日本の産業界に直接的な影響を及ぼす。特に、ロンドン金属取引所(LME)で1トンあたり1万3000ドルを超えた銅は、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連製品の主要部材であり、日本の自動車メーカーや電機メーカーの調達コストを押し上げる。例えば、日本の大手自動車メーカーは、EV生産拡大に伴い銅の使用量を増やしており、この高騰は収益を圧迫する。

また、銀のロンドン現物価格が1オンスあたり91ドルを突破したことは、太陽光パネル製造企業に二重の影響を与える。国内の太陽光パネルメーカーは、銀を電極材料として多用しており、直接的な材料費増加に直面する。同時に、中国国内市場で銀の在庫が減少し、現物価格にプレミアムが上乗せされている状況は、中国からの部品調達に依存する日本企業にとって、サプライチェーンの不安定化とさらなるコスト増を招く可能性がある。

一方、中国人民銀行の金保有量が7415万オンスに達し、米ドル依存を減らす動きは、国際金融市場における円の相対的な位置付けに影響を及ぼす。中国が金保有を増やすことで、米ドルへの信認が揺らげば、円が安全資産としての役割を強化する機会も生まれるが、同時に、日本企業が米ドル建てで保有する資産の価値変動リスクも高まる。日本企業は、為替ヘッジ戦略の見直しや、金などの代替資産への分散投資を検討する必要がある。