米メタがメタバース事業を縮小する一方、台湾のHTCは独自路線を堅持し、クリエイターエコノミーの構築を急いでいる。巨大IT企業が生成AIへ軸足を移す中、メタバース市場の勢力図が変化しつつある。
海外テックメディアによると、メタは2024年1月、メタバース事業部門であるリアリティ・ラボの従業員の10%を解雇し、複数のVRゲームスタジオを閉鎖した。この動きは、メタバースが一時の流行を過ぎたとの見方を広げている。
独自路線を歩むHTC「VIVERSE」
対照的に、HTCはメタバースプラットフォーム「VIVERSE」のパートナープログラムを発表し、クリエイター支援を強化する。このプログラムにより、クリエイターはVIVERSE上でコンテンツを公開し、閲覧数に応じた収益を得ることが可能になる。HTCは、クリエイターがアップロードしたコンテンツをAIモデルの訓練に使用しないことも約束しており、クリエイターの権利保護を重視する姿勢を明確にした。
VIVERSEは、HTCが2022年に発表したオープンな3Dコンテンツ配信・ソーシャルプラットフォームだ。利用者はアバターを通じて仮想空間で他者と交流したり、空間を探索したりできる。クリエイターは専用ツールを用いてコンテンツを制作・配信できる仕組みとなっている。
コンテンツ不足という最大の課題
メタバースが広く普及するには、ハードウェアとソフトウェアの両輪が不可欠だ。HTCのVRヘッドセットは高品質な仮想世界を生成できるが、その世界を魅力的にするコンテンツの質と量が成功の鍵を握る。
現在、メタバースが直面する最大の課題は、魅力的なコンテンツの不足だ。メタやHTCは、時間と空間の制約を超えて新しい世界を提供したインターネットの成功モデルをメタバースに適用しようと試みてきた。しかし、現状のメタバースは現実世界を模倣した体験が多く、利用者を引きつける独自の価値を提供できていないとの指摘もある。
日本企業への示唆
メタのメタバース事業縮小は、日本企業にとって二つの明確な機会と一つのリスクをもたらす。まず、メタがリアリティ・ラボの従業員10%を解雇しVRゲームスタジオを閉鎖した事実は、メタバース市場の「冬の時代」入りを示唆するが、同時に日本のVR/ARハードウェアメーカーやコンテンツ開発企業にとっては、競争環境の変化という好機となる。例えば、ソニーのPlayStation VR2のような高品質なVRデバイスは、メタの撤退によって市場での存在感を高める可能性があり、日本のゲームスタジオは、メタが閉鎖したスタジオが手掛けていたようなVRコンテンツ開発の空白を埋めるチャンスがある。
次に、HTCが「VIVERSE」でクリエイター支援を強化し、AIモデル訓練へのコンテンツ不使用を約束したことは、日本のクリエイターエコノミー関連企業にとって新たな提携先を見出す機会となる。日本のコンテンツ制作者は、著作権保護を重視するHTCのプラットフォームを、メタの様な巨大プラットフォームに代わる収益源として活用できる。これにより、日本のIP(知的財産)が海外のメタバース空間で展開される道が広がる。
一方で、メタバース市場全体のコンテンツ不足は、日本企業にとっても共通のリスクである。日本のコンテンツ制作能力は高いが、メタバース特有の「現実世界を模倣した体験」からの脱却と「利用者を引きつける独自の価値」の創出が急務となる。既存のゲームやアニメの延長線ではない、メタバースならではの体験を創造できなければ、日本企業も市場の停滞に巻き込まれる可能性がある。
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