米半導体大手NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、中国が最先端のAI(人工知能)半導体を入手すべきではないとの考えを表明した。米国の技術的優位性を維持する必要性を強調する一方、中国市場での事業継続も求める発言は、米国の対中規制とグローバル企業の利益追求との間で揺れるジレンマを浮き彫りにしている。

米国の技術的優位を支持、対中規制を容認

日経アジアが5日に報じたところによると、フアン氏は4日、米ロサンゼルスで開催されたミルケン研究所の会合で講演した。その中で「中国が最新・最高の半導体を得るべきか」との質問に対し、「ノー」と明確に否定。「米国がAI分野で『ナンバーワンで、最大で、最高』の優位性を持つことを断固として支持する」と述べ、米政府による最先端半導体の対中輸出規制を支持する姿勢を明確にした。これは、米国の安全保障を優先し、中国の技術的台頭を抑える狙いに沿ったものだ。

中国市場の重要性も強調、板挟みのジレンマ

一方でフアン氏は、米国企業が中国を含むグローバル市場で競争を続けることの重要性も強調した。世界市場で事業を展開して得られる輸出収益が、米国の税収を増やし、結果的に経済安全保障と国家安全保障の強化につながると主張した。この発言は、巨大な中国市場を失いたくないという企業としての本音を反映している。最先端技術の流出は防ぎつつも、性能を調整した製品で中国事業は継続したいという、一見矛盾する立場を示した形だ。

中国はダウングレード版も敬遠、国産化を優先

米国政府はNVIDIAに対し、最先端品ではないものの高性能なAI半導体「H200」などの対中輸出を一部許可している。しかし、レモンド米商務長官が4月22日に議会で証言した内容によると、中国側は国産半導体の開発を優先しており、これらの半導体を「1つも購入していない」という。中国商務省も、企業によるH200の購入を政府が許可したとの一部報道を否定するなど、米国の戦略は思惑通りに進んでいない状況だ。米中のハイテク覇権争いが激化する中、NVIDIAのようなグローバル企業は両国の間で難しい舵取りを迫られている。

日本への影響と示唆

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが最先端AI半導体の対中供給を否定したことは、日本企業にとって複数の直接的な影響をもたらす。まず、中国が「H200」のようなダウングレード版半導体すら「1つも購入していない」という事実は、中国が国産化を加速させている明確な証左だ。これは、中国市場における高性能半導体の需要が、今後、米国製やその代替品ではなく、中国国内で生産される製品へとシフトする可能性が高いことを意味する。日本の半導体製造装置メーカーや素材メーカーは、中国の半導体サプライチェーンに深く組み込まれているため、この国産化の動きが本格化すれば、中国向け輸出の減少や、中国企業との競合激化に直面する。

次に、フアン氏が「米国がAI分野で『ナンバーワンで、最大で、最高』の優位性を持つことを断固として支持する」と述べたように、米国の技術覇権維持への強い意志は、日本企業が中国と共同で先端技術開発を進める上での制約を強める。特にAI関連技術やその基盤となる半導体分野において、日中間の技術協力は米国の監視下に置かれ、米国の輸出管理規制に抵触するリスクが高まる。

最後に、NVIDIAのようなグローバル企業が米中間の「ジレンマ」に直面している状況は、日本企業も同様のリスクを抱えることを示唆する。中国市場の重要性を認識しつつも、米国の安全保障政策に配慮した事業戦略が不可欠となる。これは、サプライチェーンの再構築や、特定の市場に依存しない多角的な事業展開を加速させる必要性を浮き彫りにする。