米国の厳しい輸出規制を受け、中国が半導体の国内サプライチェーン構築を急いでいる。国家主導の巨額投資を背景に、特に成熟した「レガシー半導体」分野で生産能力を増強し、世界市場での存在感を高める狙いだ。
国家主導で進む「半導体強国」への道
中国政府は、半導体産業を国家戦略の核心と位置づけ、「国家集積回路産業投資基金(大基金)」などを通じて国内企業に巨額の資金を投じている。これにより、ファウンドリ最大手のSMIC(中芯国際集積回路製造)やメモリー大手のYMTC(YMTC科学技術)などが急速な成長を遂げた。
米国の制裁により先端製造装置の輸入が困難になる中、SMICは既存の装置を活用し、ファーウェイのスマートフォン向けに7nm(ナノメートル)プロセスの半導体を製造したと報じられ、その技術力が注目を集めた。
先端分野の課題とレガシー市場への注力
一方で、最先端プロセスに不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置などは入手できず、5nm以下の先端半導体の量産には依然として高い壁が存在する。このため、中国は戦略を一部転換し、自動車や家電などに広く使われる28nm以上のレガシー半導体の生産能力拡大に注力している。
この動きは、世界的なレガシー半導体市場での供給過剰と価格競争を招く可能性があり、各国の既存メーカーにとって脅威になるとの見方が強まっている。新華社通信も、国内の半導体自給率向上が急務であると伝えている。
日本への影響
中国のレガシー半導体生産能力増強は、日本の半導体関連企業にとって明確な事業機会とリスクをもたらす。まず、中国が28nm以上のレガシー半導体生産に注力することで、関連する製造装置や材料の需要が拡大する。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった日本の製造装置メーカーは、EUV露光装置のような最先端機器の輸出規制が続く中、中国のレガシー分野投資によって、既存製品の需要増という恩恵を受ける可能性がある。特に、中国が自給率向上を急ぐ中で、信頼性の高い日本の部材や装置が選好される動きも期待できる。
一方で、中国のレガシー半導体市場への攻勢は、世界的な供給過剰と価格競争を引き起こし、既存のレガシー半導体メーカーにとって脅威となる。例えば、ルネサスエレクトロニクスや東芝といった日本の半導体メーカーは、自動車や家電向けレガシー半導体で中国企業との競合が激化し、収益性が圧迫されるリスクがある。特に、ファーウェイが7nmプロセス半導体を製造した事例が示すように、中国企業は技術的キャッチアップが早く、レガシー分野でもコスト競争力を武器に市場シェアを奪いにくる可能性が高い。日本企業は、高付加価値製品へのシフトや、特定のニッチ市場での優位性確立を急ぐ必要がある。