新エネルギー車(NEV)やドローン(無人機(ドローン))の普及に伴い、高性能な電池への需要が高まっている。既存のリチウムイオン電池が抱える安全性の課題やエネルギー密度の限界を克服するため、全固体電池が次世代技術として注目されている。中国の工業情報化部(MIIT)は、2026年までの事業計画において全固体電池を重点技術と位置付け、開発を推進している。
半導体技術を応用した独自開発
こうした中、新興企業の安高特電(Ango-Power)は、半導体技術を応用した独自の全固体電池開発を進めている。同社は高エントロピー複合材料を用いた固体電解質を開発し、700Wh/kgを超えるエネルギー密度を達成したと発表した。
最終的には、半導体ウェハー技術を基盤とする「ウェハーレベル全固体電池」で1000Wh/kg以上のエネルギー密度を目指すとしている。この技術は、電池の性能を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。
名門大出身者らで量産体制構築へ
同社の呉珠智(Wu Zhuzhi)最高経営責任者(CEO)によると、研究開発チームは長年にわたり安全性と高エネルギー密度を両立する電池開発に取り組んできた。チームにはハーバード大学やスタンフォード大学など、海外の名門大学出身の研究者が多数在籍しているという。
安高特電はシリーズAラウンドの資金調達を完了し、調達資金を量産体制の構築と事業拡大への投資に充当する計画だ。2026年には本格的な収益化と急成長を目指す。同社の技術革新は、中国の車載電池産業の競争力をさらに高めるものとして期待されている。
まとめ:日本への示唆
安高特電(Ango-Power)が2026年の量産を目指す700Wh/kg超の全固体電池開発は、日本の自動車・電池産業に直接的な影響を及ぼす。まず、中国のNEV市場における競争激化は避けられない。現状、日本の電池メーカーはリチウムイオン電池で先行するCATLなど中国勢に後塵を拝しており、全固体電池で巻き返しを図るトヨタ自動車や日産自動車にとって、Ango-Powerの技術は新たな脅威となる。特に、半導体技術を応用した「ウェハーレベル全固体電池」で1000Wh/kg以上を目指すという目標は、日本の電池開発ロードマップに大きな修正を迫る可能性がある。
次に、ドローン産業におけるサプライチェーン再編のリスクが浮上する。Ango-Powerの技術がドローンにも適用されることで、高性能・軽量な中国製ドローンが市場を席巻する可能性が高まる。これは、日本企業がドローン部品や関連技術で培ってきた優位性を失うことに繋がりかねない。
最後に、日本の研究開発人材の流出リスクも看過できない。呉珠智(Wu Zhuzhi)CEOが率いるAngo-Powerの研究チームには、ハーバード大学やスタンフォード大学出身者が多数在籍しており、中国が海外の優秀な人材を積極的に誘致している実態が浮き彫りになった。日本企業は、国内の研究環境の魅力向上や、海外からの人材確保策を強化する必要に迫られるだろう。