中国のテクノロジー企業World Labsは、3Dガウシアンスプラッティング・レンダリングエンジン「Spark 2.0」をオープンソースとして公開した。WebGL2を基盤とし、1億個を超える「スプラット」(点群データ)で構成される超大規模な3D世界を、ウェブブラウザ上でストリーミング再生できるのが特徴だ。

同社によると、4000万個以上のスプラットで構成される米サンフランシスコのコイトタワーのシーンも、ブラウザ上で完全ににインタラクティブな操作が可能だという。

1億スプラット超の大規模世界をブラウザで

Spark 2.0は、広く使われている3Dライブラリ「Three.js」を基盤に構築されている。これにより、開発者は使い慣れた環境で、1億個以上のスプラットを含む超大規模な3D世界を、PCやスマートフォンなど任意のデバイスにストリーミング配信できる。

性能を担保するため、Spark 2.0は詳細度(LOD)技術、プログレッシブ・ストリーミング、仮想メモリという3つの主に技術を実装している。これにより、大規模なデータも効率的に処理し、滑らかなユーザー体験を提供する。

独自開発からオープンソース化へ

World Labsは2024年、大規模世界モデルの研究プレビューを発表し、「Lofi Worlds」などの自社プロジェクトで内製のガウシアンスプラッティング・レンダリングエンジンを使用していた。しかし、この内製エンジンは、一度に1つのオブジェクトしか正しく描画できないなど、市販のWebレンダリングエンジンと比較して課題があった。

同社はこれらの技術的蓄積を整理し、2023年に「Forge」という名のオープンソースエンジンを公開。その後、現在の「Spark」に名によるとを変更した経緯がある。今回のSpark 2.0の公開は、これまでの開発成果を広くコミュニティに還元する動きだ。

LODとストリーミングで性能向上

Spark 2.0の核となる技術の一つが、詳細度(LOD)技術だ。これはカメラの視点に応じて、描画に必要なスプラットのサブセットを動的にフィルタリングする仕組みである。遠景の領域では描画するスプラットの数を減らし、レンダリング性能を大幅に向上させる。

また、プログレッシブ・ストリーミング技術により、データを段階的にダウンロードし、シーンをスムーズに述べたする。仮想メモリ技術も実装しており、ユーザーの位置に応じて必要な3DガウシアンスプラッティングのデータブロックをGPUメモリ上で自動的に入れ替えることで、メモリ使用量を最適化していると新華社通信は伝えている。

日本にとっての意味

World Labsによる「Spark 2.0」のオープンソース化は、日本のゲーム開発、メタバース、デジタルツイン分野に具体的な影響をもたらす。まず、4000万個以上のスプラットで構成されるコイトタワーのシーンをブラウザでインタラクティブに操作できる性能は、日本のゲーム業界にとって新たな表現の可能性を開く。特に、小規模・中規模のゲームスタジオが、高価な商用エンジンに頼らず、ブラウザベースで大規模な3D空間を構築する機会が生まれる。これにより、開発コストを抑えつつ、革新的なゲーム体験を提供できる可能性がある。

次に、1億個以上のスプラットをPCやスマートフォンにストリーミング配信できる技術は、日本の建設・都市計画分野におけるデジタルツイン構築を加速させる。例えば、都市全体の3Dモデルをブラウザ上で共有し、関係者がリアルタイムで共同作業を行うことが容易になる。これまで専用の高性能ワークステーションが必要だった作業が、一般的なデバイスで可能になることで、導入障壁が下がり、スマートシティ構想の具体化に貢献するだろう。

最後に、World Labsが「Three.js」を基盤としている点は、日本のWeb開発者にとって参入しやすい環境を提供する。既存のWeb技術スキルを活かし、3Dコンテンツ開発に参入できるため、新たな産業の創出や、既存産業のデジタル化を促進する。特に、観光業では、地方の観光地を1億スプラットを超える高精細な3Dモデルで再現し、バーチャル観光体験を提供することで、新たな集客チャネルを開拓できる。