テンセント・ミュージック・エンターテインメント(テンセント音楽娯楽集団、以下テンセント音楽)が、チケット販売事業に本格参入した。同社は自社開発のチケットプラットフォーム「オーピャオピャオ(鵝票票)」を立ち上げ、WeChat(ウィーチャット)のミニアプリとして提供を開始。中国のオンラインチケット市場で既存大手との競争が激化する見通しだ。
新プラットフォーム「オーピャオピャオ」始動
「オーピャオピャオ」の運営主体は、テンセント音楽の深圳法人である「テンセント・ミュージック・エンターテインメント(深圳)有限公司」だ。サービス内容は興行チケット販売と明記されており、現在はWeChat(ウィーチャット、中国名:WeChat(微信))のミニアプリ形式で運営されている。巨大なユーザー基盤を持つスーパーアプリ内でサービスを展開することで、手軽なアクセスを強みとする戦略だ。
大手ひしめく市場への挑戦
中国のオンラインチケット市場は現在、Alibabaグループ傘下の「大麦(ダーマイ)」や「猫眼(マオイェン)」、「紛玩島(フェンワンダオ)」といったプラットフォームが主導権を握る寡占状態にある。テンセント音楽の参入は、この市場構造に変化をもたらす可能性があると、中国の複数のメディアが報じている。
音楽事業との相乗効果を狙う
テンセント音楽は、自社の音楽ストリーミングプラットフォームが持つ優位性を最大限に活用する戦略だ。国内外の多数のレコード会社や芸能事務所と緊密な協力関係を築いているほか、ティア・レイ(袁婭維)やアンジェラ・チャン(張韶涵)など、多くの人気アーティストとエージェント契約を結んでいる。
新プラットフォームの核心は、音楽ストリーミング、アーティストマネジメント、ライブイベント制作といった既存事業を連携させる点にある。これにより、オンラインのコンテンツ視聴からオフラインのライブ体験、そして収益化へとつなげる一貫したビジネスサイクルを構築する狙いだ。
日本への影響
テンセント音楽のチケット事業参入は、日本のエンタテインメント業界に対し複数の影響をもたらす。まず、同社がWeChatのミニアプリ形式で「オーピャオピャオ」を展開する戦略は、巨大なユーザー基盤を活かした強力な集客力を持つ。これにより、日本のアーティストや興行主が中国市場でライブイベントを企画する際、従来のチケット販売チャネルに加え、テンセント音楽との連携が新たな選択肢として浮上する。特に、テンセント音楽がティア・レイやアンジェラ・チャンなど多くの人気アーティストとエージェント契約を結んでいる事実は、彼らが持つアーティストネットワークを通じて、日本のコンテンツが中国のファンにリーチする機会が増えることを意味する。
一方で、リスクも存在する。テンセント音楽が音楽ストリーミングからライブイベントまで一貫したビジネスサイクルを構築することで、中国のエンタテインメント市場におけるテンセントの影響力は一層強固になる。これは、日本の興行主やアーティストが中国市場で独立した活動を行う際に、テンセントグループのプラットフォームへの依存度が高まる可能性を示唆する。また、中国のオンラインチケット市場はAlibaba傘下の「大麦」などが寡占しており、テンセントの参入は競争を激化させる。この競争激化は、日本のコンテンツが中国市場でプロモーションや販売を行う際のコスト上昇や、条件交渉の難化につながる可能性も孕んでいる。日本のエンタテインメント企業は、テンセントの動向を注視し、中国市場での新たなパートナーシップ戦略を検討する必要があるだろう。