米バイデン政権は、中国の半導体技術の発展を抑制するため、輸出規制を段階的に強化している。これに対し中国は、巨額の国家投資を通じて国内の半導体サプライチェーン構築を急ぎ、技術的自立を目指す姿勢を鮮明にしている。米中の技術覇権争いは、世界の半導体業界の構造を大きく揺さぶっている。

米、先端技術の輸出規制を強化

米国商務省は、国家安全保障上の脅威を理由に、中国に対する半導体関連の輸出規制を厳格化している。特に、先端ロジック半導体や高性能メモリーの製造に必要な製造装置、設計ソフトウェア(EDA)、関連技術が対象だ。この措置は、米国のラムリサーチやアプライドマテリアルズ、オランダのASMLといった主に装置メーカーの対中ビジネスに直接的な影響を与えている。

規制の目的は、中国が軍事転用可能な高性能半導体を独自に開発・生産する能力を削ぐことにある。これにより、中国の半導体ファウンドリ最大手であるSMIC中芯国際集積回路製造)やメモリー大手のYMTC(YMTC科学技術)などの先端プロセス開発が遅延するとの見方が強い。

中国、「大基金」主導で国産化を加速

米国の制裁に対し、中国政府は国内半導体産業の育成を国家戦略の最優先課題と位置付けている。政府系ファンド「国家集積回路産業投資基金」(通によると「大基金」)などを通じて、国内の半導体設計、製造、封止・検査(OSAT)分野の企業に数百億ドル規模の資金を投じている。

新華社通信によると、習近平国家主席は「核心技術の自立自強」を繰り返し強調しており、国内企業は成熟プロセス(28nm以上)の生産能力拡大や、国産製造装置の開発に注力している。ファーウェイ(ファーウェイ技術)のように、米国の規制下で独自の半導体設計能力を維持・向上させようとする動きも活発だ。

日本にとっての意味

米国の対中半導体規制強化と中国の国産化加速は、日本の半導体産業に直接的な影響を及ぼす。まず、日本の製造装置メーカーは、米国の輸出規制により、中国市場でのビジネス機会の喪失に直面する。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった企業は、先端ロジック半導体製造装置の対中輸出が制限され、売上減少のリスクを抱える。これは、中国が「大基金」を通じて数百億ドル規模の資金を投じ、国産化を急ぐ中で、日本企業が中国市場で競争力を維持するための戦略再構築を迫られることを意味する。

次に、中国の半導体国産化の動きは、日本の半導体材料メーカーにとって新たな市場機会を生み出す可能性がある。中国が成熟プロセス(28nm以上)の生産能力を拡大する中で、日本のレゾナックや信越化学工業が提供する高純度シリコンウェハーやフォトレジストといった材料の需要が増加する。ただし、中国企業が将来的に材料分野でも国産化を進める可能性があり、日本企業は技術優位性を維持し続ける必要がある。

最後に、日本の自動車産業や電機メーカーは、米中対立による半導体サプライチェーンの分断リスクに備える必要がある。中国がSMICYMTCの代替として国産半導体の供給を増やす場合、品質や供給安定性の評価が重要となる。日本企業は、特定の地域や企業に依存しない多角的な調達戦略を構築し、サプライチェーンのレジリエンスを高めることが急務だ。