中国の金属ベース熱管理材料を手がけるスタートアップ「一盛新材料 (Yisheng New Materials)」が、シリーズAラウンドで数千万人民元(数億円十数億円規模)の資金調達を完了した。今回のラウンドは、通信機器大手ファーウェイ傘下のハッブル・テクノロジー・インベストメントと、中関村発展集団傘下の啓航投資が主導した。調達資金は生産設備の購入、生産能力の拡大、および新材料の研究開発に充てられる。
ファーウェイ傘下などが出資、生産能力拡大へ
2024年9月18日に設立された一盛新材料は、中国の国家ハイテク企業認定を受けている。同社は国家級の金属基複合材料工学実験室を母体とし、金属ベース複合材料の研究開発を専門とする。界面制御技術や複雑なコンポーネントのニアネットシェイプ成形技術、低コストな製造プロセスといったコア技術で業界をリードしている。
創業者である武高輝氏は、アジア太平洋材料科学アカデミーの会員であり、中国における金属基複合材料分野のパイオニアの一人とされる。同氏は40年以上前に研究を開始し、中国で初めて金属基複合材料を開発した実績を持つ。
独自の製造技術で住友電工超えの性能
一盛新材料の製品群には、ダイヤモンド/銅、ダイヤモンド/アルミニウムといった超高熱伝導材料や、グラファイト/アルミニウム、炭素繊維/アルミニウムなどの新素材が含まれる。これらの材料は、先端半導体、新エネルギー、民生用電子機器などの分野で求められる高い熱伝導性、軽量性、高強度、高剛性を実現する。
同社は、主流の粉末冶金法ではなく、独自の真空・加圧含浸技術を採用。これにより、100%に近い高密度な材料の製造を可能にした。自社開発のタングステン(W)被膜厚制御プロセスにより、ダイヤモンドと母材金属との間に有害な界面反応を防ぎつつ、高い熱伝導性を確保。宇宙開発レベルの環境試験でも、熱伝導率の低下は2.5%未満と、文献報告値で最小レベルを達成したと主張している。
性能面では、ダイヤモンド/アルミニウム複合材料の熱伝導率が550〜750W/(m·K)、ダイヤモンド/銅が750〜980W/(m·K)に達し、日本の住友電工やオーストリアのPlanseeといった競合の製品を上回るとしている。
AI・6G時代の「しなければならない」材料目指す
AIの計算能力需要の爆発的増加や新エネルギー車(NEV)の普及に伴い、チップの消費電力は4〜5倍に増大し、発熱量の問題が深刻化している。一盛新材料は、従来の熱管理材料ではこの課題に対応できず、同社が開発する第4世代の高熱伝導複合材料が「選択肢」から「しなければならない」の存在に変わると見ている。
同社は、AIデータセンターや第6世代移動通信システム(6G)、低軌道衛星などの分野で需要が急増し、ダイヤモンド複合材料の中国国内における潜在市場規模は100億元(約2100億円)に達すると予測。今回の資金調達を元に市場と生産能力の拡大を加速させ、今後3〜5年以内の上場を計画している。中国メディアの報道によると、出資者である啓航投資の馬建平マネージングパートナーは「高い熱伝導率と調整可能な熱膨張係数を持ち、量産コストも両立させており、次世代放熱材料の明確な方向性を示している」と評価した。
日本にとっての意味
一盛新材料の台頭は、日本の先端材料産業、特に住友電工のような熱管理材料メーカーにとって直接的な競争圧力となる。同社は、ダイヤモンド/銅複合材料で750〜980W/(m·K)という高い熱伝導率を達成し、日本の競合製品を上回ると主張している。これは、日本の技術的優位性が揺らぎかねないことを示唆する。
また、ファーウェイ傘下のハッブル・テクノロジー・インベストメントが出資している点は、中国が半導体サプライチェーンの国産化を加速させる中で、熱管理材料もその戦略的対象と見なしていることを明確に示している。AIデータセンターや6Gといった次世代技術において、ダイヤモンド複合材料の中国国内市場が100億元(約2100億円)に達すると予測されていることから、日本企業がこの巨大な市場で競争力を維持するためには、技術革新だけでなく、サプライチェーンの再構築や新たなビジネスモデルの模索が急務となる。特に、中国市場における技術標準化や規制動向を注視し、日本企業が持つ独自の技術やノウハウをいかに差別化し、新たな価値を創出できるかが問われるだろう。
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