米ラスベガスで開催された「CES 2026」において、中国のAIハードウェア企業が大きな存在感を示した。出展企業数は前年より減少したものの、ロボットやAI家電などの分野で高い技術力を披露し、地政学的な摩擦を乗り越えて北米市場での販路開拓を進める動きが活発化している。
ロボット分野で技術力を誇示
ロボット展示会場では、中国企業の躍進が際立った。ロボット開発企業「RobotEra(RobotEra(星動紀元))」の技術担当副社長である侯偉氏は「中国の主に企業はすべて参加している。二足歩行ロボットの分野では、中国以外の企業は非常にに保守的で、ライブデモンストレーションを行う企業も少ない」と語り、技術的な優位性に自信を見せた。
中国はすでに世界のハードウェアにおけるサプライチェーンの重要な拠点となっており、新興のハードウェアブランドも中国の供給網の強みを活かして次々と登場している。CESの会場は、その実力を世界に示す場となった。
出展企業は減少も、存在感は健在
データ上は、中国企業の参加規模は縮小している。CES 2026に中国の住所で登録した企業は935社で、全体の約20%を占めたが、2025年の1300社以上からは大幅に減少した。この背景には、米中間の技術覇権争いがあるとみられる。
AIハードウェア企業「Ludens AI」の創業者である薛立君氏は、ある米国人記者から「あなたたちのサプライチェーンは深圳にあるのか。チームに中国人のエンジニアはいるのか。私たちのデータはどこに保存されるのか」と立て続けに質問されたエピソードを明かした。これは、米国側が中国のテクノロジー企業に対して抱く警戒感の表れだ。
AI家電、北米市場開拓へ
一方で、製品そのものの価値が市場に評価される事例も出ている。AI調理家電ブランド「wan.AI Chef」は今回がCES初出展だった。同社のブランド責任者、林燕妮氏によると、当初の目的は北米市場の調査だったが、現地の代理店やアフターサービス企業から多くの接触があったという。「Best BuyやHome Depotを含む大手小売業者から、協力の意向が示された」と、同氏は成果を語った。
こうした動きは、地政学的な緊張関係があってもなお、優れた製品やサービスは市場に受け入れられることを示唆している。中国のAIハードウェア企業は、データ活用、利用シナリオ、顧客体験といった側面から、グローバル市場での事業戦略を模索している。
結論:日本への示唆
CES 2026における中国AIハードウェア企業の存在感は、日本企業にとって複数の具体的な影響を及ぼす。
第一に、ロボット分野における中国企業の技術的優位性は、日本の産業用ロボットメーカーにとって脅威となる。RobotEraの侯偉氏が指摘するように、中国企業が二足歩行ロボットのライブデモンストレーションに積極的であることは、実用化と市場投入への意欲の表れだ。日本のロボット企業は、これまで培ってきた精密制御技術に加え、AIとの融合や実用化スピードで中国勢に先行されるリスクを認識し、研究開発投資の加速が求められる。
第二に、AI家電の北米市場開拓は、日本の家電メーカーにとって新たな競争環境を生み出す。wan.AI ChefがBest BuyやHome Depotといった大手小売業者との協力意向を得た事実は、地政学的リスクを乗り越え、製品力で市場を掴む中国企業の戦略が奏功していることを示す。日本の家電メーカーは、高機能・高品質を追求するだけでなく、AIを活用した顧客体験の創出や、現地のサプライチェーン・販路との連携において、中国企業のスピード感と柔軟性から学ぶべき点が多い。
第三に、出展企業数が2025年の1300社以上から935社に減少したにもかかわらず、中国企業が「存在感」を示したことは、量から質への転換を示唆する。これは、米国が警戒感を強める中でも、特定の技術分野で突出した企業がグローバル市場での地位を確立しつつあることを意味する。日本企業は、中国市場への依存度が高いサプライチェーンを見直し、特定の技術分野での中国企業の台頭を前提とした事業戦略の再構築が急務となる。
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