ファーウェイのコンシューマー事業責任者、余承東(リチャード・ユー)氏が、自社の自動車事業におけるデザイン性の欠如をSNSで認めたことが中国で波紋を広げている。技術仕様を競う過当競争が限界を迎えつつあるなか、デザインが新たな競争軸として浮上。中国の自動車メーカーは「モノづくり」から「ブランドづくり」への転換を迫られている。

ファーウェイ幹部の告白が浮き彫りにした業界の課題

余氏はSNSへの投稿で「我々はこれまで安全性や品質を過度に重視するあまり、ユーザーの感性に最も直接訴えかけるデザインという視点が欠けていた」と述べた。この発言はファーウェイ一社の問題にとどまらず、多くの中国自動車メーカーが直面する共通の課題を浮き彫りにした。

中国のEV市場では、バッテリー性能自動運転技術などの仕様競争が激化してきた。しかし、技術のコモディティ化が進み差別化が難しくなる一方、デザインという本質的な価値で評価を得ている企業はまだ少ないのが実情だ。

消費者動向の変化とデザインという新たな競争軸

近年の成功事例が、デザインの重要性を示している。スマートフォン大手のシャオミが投入した「SU7」は洗練されたデザインで、新興EVのLi Auto(リ・オート)(Li Auto)の「L9」は一貫したデザイン言語で高級感を確立した。NIO(上海NIO(ニオ)汽車)の「ES9」も抑制の効いた高級感で支持を集めている。

これらの成功の背景には2つの変化がある。第一に、購入層の中心がデザインに敏感な若者や女性層へ移行した点だ。彼らにとって自動車は自己表現の手段であり、デザインは購入の重要な判断基準となっている。第二に、EVの基幹技術が普及し、ハードウェアでの差別化が困難になった点だ。仕様競争は価格競争に直結しやすく、結果としてデザインが有効な差別化要因として浮上している。

「模倣」からの脱却とブランド構築という課題

しかし、中国の自動車業界がデザインで成功を収めるのは容易ではない。業界は長らく、バッテリー容量や航続距離、演算能力といった「仕様至上主義」にあり、デザインや情緒的価値は軽視されてきた。その結果、高性能でもデザインが伴わず、高価格帯でのブランドイメージ確立に苦戦する企業は少なくない。

さらに深刻なのが、欧州高級車のデザインを安易に模倣する傾向だ。先日の北京モーターショーでも、ランドローバーの『ディフェンダー』やポルシェの『パナメーラ』に酷似したモデルが展示され、短期的な利益を優先する姿勢が根強いことを示した。中国自動車品質委員会の馬振山氏は『消費者は魂のこもったクルマを求めている』と指摘しており、独自の美学を確立し、長期的な視点でブランドを育成できるかが、中国メーカーの将来を左右する。

日本の関連性

ファーウェイの余承東氏が指摘したEVのデザイン性欠如は、日本企業にとって中国市場での新たな機会と脅威をもたらす。中国EV市場が「仕様至上主義」から「ブランドづくり」へ転換する中で、日本の自動車メーカーは、デザインとブランド構築における強みを活かせる。例えば、トヨタやホンダが長年培ってきたデザイン哲学や、レクサスのようなプレミアムブランドの構築ノウハウは、中国消費者が求める「魂のこもったクルマ」の提供に直結する。

一方で、シャオミの「SU7」やNIOの「ES9」のように、中国企業がデザインを重視した製品で急速に市場シェアを拡大する可能性は、日本企業にとって脅威となる。特に、中国市場の消費者がデザインに敏感な若年層や女性層へ移行している点を考慮すると、日本企業は単なる技術スペック競争だけでなく、中国市場の嗜好に合わせたデザイン戦略を強化する必要がある。

また、中国企業が欧州高級車のデザインを模倣する傾向が指摘されているが、これは一時的な現象に過ぎない。中国政府も知的財産権保護を強化しており、将来的には独自のブランド確立が不可欠となる。日本企業は、この転換期を捉え、中国企業との協業や、デザイン部門への投資を通じて、中国市場におけるプレゼンスを強化すべきである。これにより、単なる部品供給に留まらない、より高付加価値なビジネスモデルを構築できる。