2026年に入り、中国が全方位での外交を活発化させている。1月にはカナダとイギリスを含む5カ国の首脳が相次いで訪中した。米国との対立が続くなか、欧州や発展途上国との関係を強化し、独自の国際秩序形成を目指す動きが鮮明になっている。

活発化する首脳外交

2026年1月、中国は5カ国の首脳を北京に迎えた。特にカナダとイギリスの首脳による訪中は8年ぶりとなり、西側諸国との関係改善への意欲を示した形だ。中国外務省によると、今後も各国首脳の訪中が多数予定されており、積極的な首脳外交を展開する方針である。

一方で、中国の海外における戦略的拠点は課題にも直面している。中米パナマでは、最高裁判所の裁定に基づき、香港の長和実業(CKハチソン・ホールディングス)が運営権を持つ港湾が国有化される事態も発生したと、一部海外メディアは伝えている。

新たな外交戦略の4本柱

中国は、大国が武力に頼らずに台頭する「平和的台頭」を掲げているが、これは歴史上、前例のない試みだと指摘されている。こうした中、中国は新たな外交の基本的に方針を明確にしている。

その戦略は、「大国関係を鍵とし、周辺国を最優先し、発展途上国を基盤とし、多国間協力を重要な舞台と位置づける」という4つの柱からなる。この方針に基づき、米国との間で競争と協力を織り交ぜた複雑な関係を維持しつつ、多角的な外交を展開している。

「ミドルパワー」へのに近いと実利主義

この戦略において特に注目されるのが、イギリスやフランスといった「ミドルパワー(中堅国)」との関係強化だ。これらの国々に対しては、イデオロギーよりも経済的な実利を重視し、友好関係の拡大を目指す姿勢が顕著である。

国際関係学においてミドルパワーとは、一般的に国内総生産(GDP)が世界10位から30位、軍事費が15位から30位程度の国を指す。国際問題の解決に積極的に関与する国々と定義され、中国はこれらの国々を国際社会における重要なプレーヤーと見なしている。

日本市場への影響

中国の全方位外交加速は、日本企業にとって事業環境の再編を促す。特に、2026年1月にカナダとイギリス首脳が8年ぶりに訪中した事実は、西側諸国と中国との経済関係が、地政学的リスクと並行して新たな実利主義的フェーズに入ったことを示唆する。これにより、日本企業はこれまで米国一辺倒だったサプライチェーンや市場戦略を見直す必要に迫られる。

第一に、中国が「ミドルパワー」との経済的実利を重視する姿勢は、日本企業が欧州市場で中国企業と競合する機会が増えることを意味する。例えば、フランスやイギリスといった国々が中国との経済連携を深めることで、これら市場における日本製品の競争優位性が相対的に低下する可能性がある。

第二に、中国の海外戦略拠点におけるリスク顕在化は、日本企業の海外投資戦略に警鐘を鳴らす。パナマでの長和実業(CKハチソン・ホールディングス)が運営する港湾の国有化は、途上国におけるインフラ投資や運営事業における予期せぬ政治的リスクを浮き彫りにした。日本企業が新興国市場で事業展開する際には、契約の法的安定性や現地の政治動向をこれまで以上に厳しく評価する必要がある。

最後に、中国が「大国関係を鍵とし、周辺国を最優先し、発展途上国を基盤とし、多国間協力を重要な舞台と位置づける」という外交戦略は、日本がアジア太平洋地域で築いてきた経済圏に中国がより積極的に関与してくることを示唆する。これは、日本企業がASEAN諸国などで事業展開する際、中国企業との協業や競合の機会がこれまで以上に増えることを意味し、戦略的なアライアンス構築や差別化が喫緊の課題となる。