中国の旧正月にあたる「春節」の祝賀行事で、AI(人工知能)やロボット技術が大きな注目を集めた。中国中央テレビ(CCTV)の国民的年越し番組で複数のヒューマノイドロボットがパフォーマンスを披露したほか、IT大手各社が生成AIを活用した大規模なキャンペーンを展開し、技術力をアピールした。
IT大手がAI活用キャンペーンで競演
今年の春節では、中国の主にIT企業が自社のAIサービスを前面に押し出した。中国メディアの報道によると、AlibabaはAIモデル「Qwen(通義千問) (Qwen)」を活用し、ユーザーにミルクティーを贈るキャンペーンを実施。テンセントもAIモデル「混元 (Hunyuan)」を使い、総額10億元(約210億円)規模の電子マネーのお年玉(紅包)を配布した。
また、動画共有アプリTikTokを運営するByteDance傘下のクラウド部門「Volcano Engine (火山引擎)」は、CCTVの年越し番組『春節聯歓晩会』(通によると「春晩」)の独占AIクラウドパートナーとなり、配信インフラを支えた。各社は国民的行事を舞台に、自社技術の優位性を競い合った形だ。
国営放送でヒューマノイドロボットが演舞
今年の「春晩」では、最先端のロボット技術も披露された。番組内では、Unitree Robotics (Unitree(宇樹科学技術)) 製のヒューマノイドロボットが複数台登場し、音楽に合わせてダンスを披露。同社は番組の「指定ヒューマノイドロボットパートナー」に選ばれている。
さらに、GalaxyBot (Galbot(銀河通用)) は「指定身体性AI(エンボディードAI)ロボットパートナー」として、同社のロボットが番組に参加。スタートアップ企業のMagic Atom (魔法原子) も「スマートロボット戦略パートナー」として名を連ねた。国営放送という大舞台で複数のロボット企業が技術を披露するのは異例であり、中国が国を挙げてロボット産業を推進する姿勢を浮き彫りにした。
日本にとっての意味
今回の春節におけるAIとロボットの主役化は、日本企業にとって複数の具体的な影響と機会をもたらす。まず、AlibabaがAIモデル「Qwen」でミルクティーを贈るキャンペーンを展開し、テンセントが「Hunyuan」で10億元規模の電子マネーを配布した事例は、中国IT大手が生成AIをマーケティングや顧客エンゲージメントの核と捉え、巨額の投資を行っている現実を示す。これは、日本企業が中国市場で競争する上で、単なる製品やサービスの品質だけでなく、AIを活用した顧客体験の革新が不可欠であることを意味する。特に、中国の消費者のAI技術への受容度は高く、日本企業が旧来型のプロモーション手法に固執すれば、競争力を失うリスクがある。
次に、CCTVの「春晩」でUnitree RoboticsやGalaxyBotといった中国企業製のヒューマノイドロボットが演舞を披露したことは、中国がロボット技術、特にエンボディードAI分野で急速に技術力を高めている証左だ。日本はこれまで産業用ロボットで優位性を保ってきたが、人型ロボットやサービスロボット分野での中国企業の台頭は、日本のロボット産業にとって新たな競争圧力となる。特に、中国政府が国を挙げてロボット産業を推進している背景を考えると、日本企業は単体での技術開発だけでなく、中国市場における協業や、特定のニッチ分野での差別化戦略を加速する必要がある。日本の強みである精密部品やセンサー技術を、中国のロボット企業に供給する新たなビジネス機会も生まれる可能性がある。