中国の海洋経済が急速な成長を遂げている。2024年の海洋分野の総生産額は10兆5000億元(約220兆円)に達する見込みで、2012年の5兆元から倍増した。習近平国家主席は「質の高い発展」を掲げ、海洋強国の建設を加速させる方針だ。7月1日の重要演説では、技術革新や産業強化を含む6つの重点課題が示された。

12年で倍増、急成長する海洋経済

中国は広大な海岸線と排他的経済水域を持つ海洋大国であり、海洋経済を国家発展の戦略的要衝と位置づけている。2012年の第18回党大会以降、習近平指導部は海洋強国建設を重要政策として推進してきた。

その結果、海洋経済の規模は着実に拡大。造船や海洋エンジニアリング設備は国際的な競争力を高め、海運規模は世界トップクラスを維持している。また、漁業やエネルギー資源の開発能力も著しく向上した。

習近平氏が示す「海洋強国」への道筋

習近平国家主席は、7月1日に開かれた第20期中央財経委員会第6回会議で重要演説を行い、「経済強国は必ず海洋強国でなければならない」と強調。中国の特色ある海洋強国への道を歩む必要があると述べた。

この方針は、現在策定中の「第15次5カ年計画」にも盛り込まれる見通しだ。新華社通信によると、計画では技術革新、高効率な連携、産業の高度化、人と海洋の調和、国際協力の5点を重視し、海洋経済の質の高い発展を目指すとしている。

6つの重点課題と国家戦略

会議では、海洋経済の発展に向けた6つの具体的な重点課題が提起された。

  1. 国家レベルの設計強化: 統合的な計画を策定し、政策支援を強化。民間資本の参加を促し、沿海港湾群の再編や現代的な海洋都市の発展を推進する。
  2. 科学技術の革新: 基幹技術・設備の開発を加速し、自主的な技術革新能力を高める。企業の技術実用化を支援するプラットフォームを構築する。
  3. 海洋産業の強化: 造船業の優位性を固め、海洋バイオ医薬品などの新興産業を育成。深海・遠洋養殖や海洋牧場といった現代的な漁業を発展させる。
  4. 資源利用と環境保護: 海洋資源の開発制度を整備し、埋め立てを厳格に管理する。海洋石油・天然ガスの探査や洋上風力発電の建設を推進しつつ、生態系の保護・修復も同時に進める。
  5. 深海・極地探査の強化: 深海への進出、探査、開発能力を全方位的に向上させる。極地の科学観測網と国内の支援基地の建設を推進する。
  6. 海洋権益の保護: 海上での権益保護と法執行能力を強化する。グローバルな海洋ガバナンスに深く関与し、防災やブルーエコノミー分野での国際協力を進める。

日本の関連性

中国海洋経済の急成長は、日本企業にとって事業機会とリスクの両面で具体的な影響をもたらす。まず、海洋エンジニアリング設備や造船業で国際競争力を高める中国は、2024年に総生産額が10兆5000億元に達する規模となり、日本の同分野企業との競合は一層激化する。特に、中国が「基幹技術・設備の開発加速」を掲げる中で、日本の技術的優位性が脅かされる可能性が高まる。

一方で、中国の海洋資源開発、特に海洋石油・天然ガス探査や洋上風力発電の建設推進は、日本の関連技術や部品メーカーに新たな需要を生み出す可能性がある。例えば、洋上風力発電のサプライチェーンにおいて、日本の高効率な風車部品やメンテナンス技術は中国市場で一定の需要が見込める。

また、中国が「深海・極地探査の強化」を打ち出すことは、日本の深海探査技術や極地観測における知見を持つ企業にとって、共同研究や技術協力の機会を提供する。しかし、これは同時に、中国が海洋権益を強化する動きと連動しており、東シナ海などにおける日本の海洋安全保障上のリスクを高める側面も持つ。日本企業は、中国の「国家レベルの設計強化」による民間資本活用や沿海港湾群の再編といった政策動向を注視し、サプライチェーンの再構築や新たな事業提携の可能性を模索する必要がある。