春節(旧正月)期間中、中国向け石油タンカーの運賃が急騰した。中東から中国へ向かうVLCC(超大型石油タンカー)のスポット運賃は1日あたり15万ドルを超え、2020年4月以来の高値を記録した。背景には、国際制裁に伴う供給の逼迫と、中国の戦略的備蓄などによる堅調な輸送需要がある。

タンカー運賃、4年ぶり高値水準に

石油タンカー市場の運賃は春節期間中に大幅に上昇した。特に中東から中国への航路では、VLCCのTCE(期間傭船料換算収益)が6150ドル上昇し、1日あたり15万7358ドルとなった。これは2020年4月28日以来の高値水準である。VLCC全体のTCEも4626ドル上昇し、1日あたり13万1914ドルに達した。

供給逼迫と需要増が市場を牽引

CITIC(中信)建投証券(CITIC Securities)は、国際石油輸送市場が好調な要因として4点を挙げている。第一に、韓国の長錦商船(Sinokor)など大手海運企業が配船を抑制し、市況の安定化を図っていることがある。

第二に、国際制裁の影響で、制裁逃れに使われる「シャドーフリート」の活動が縮小した。これにより、正規のタンカーへの需要が集中し、供給が逼迫している。

第三に、輸送需要が市場予想を上回っている。中国の戦略的な原油調達に加え、アジアの製油所が長距離輸送となる正規ルートの原油へ調達先を切り替えているため、トンマイル(輸送距離×輸送量)ベースの需要が安定して伸びていると、同証券は分析している。

第四に、地政学的リスクを背景とした長距離航路の選択が運賃プレミアムを押し上げている。中東―アジア、米メキシコ湾―アジアなどの主に航路で運賃が上昇している。

日本市場への影響

中国向け石油タンカー運賃の急騰は、日本経済に複数の直接的な影響を及ぼす。まず、日本のエネルギー調達コストの上昇が避けられない。中東からのVLCCスポット運賃が1日15万7358ドルと2020年4月以来の高値に達したことは、日本が輸入する原油の輸送コストに直結する。日本の主要電力会社や製油所は、この運賃高騰分を最終的に製品価格に転嫁せざるを得ず、企業活動や家計に負担をかける可能性がある。

次に、海運業界における競争環境の変化が挙げられる。CITIC Securitiesが指摘する通り、国際制裁による「シャドーフリート」の活動縮小は、正規タンカーへの需要集中を招く。これは、商船三井や日本郵船といった日本の大手海運会社にとって、短期的な収益機会を増やす一方で、長期的な船隊整備計画や運航戦略の見直しを迫る。特に、Sinokorのような他社が配船を抑制する中で、日本の海運企業がどのように供給責任と収益性を両立させるかが問われる。

最後に、中国の戦略的備蓄増強とアジア製油所の調達先転換は、日本のエネルギー安全保障に新たな課題を突きつける。中国が長距離輸送となる正規ルートからの調達を増やすことで、日本が依存する中東からの原油調達における競争が激化する。これは、日本がエネルギー供給源の多様化や、より効率的な輸送ルートの確保を加速させる必要性を示唆している。