パナマ最高裁は1月29日、香港の複合企業である長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)傘下のパナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)が持つ港湾運営権を無効とする判決を下した。PPC側は強く反発しており、中国政府も自国企業の権益を保護する姿勢を強調している。

最高裁判断とCKハチソンの反発

パナマ最高裁は、PPCがパナマ運河の両岸に位置する港の運営に関して結んだ契約の有効性を否定した。この判決に対し、PPCは「信義誠実の原則に反し、契約精神を無視するものだ」と声明を発表し、パナマ側の対応を厳しく非難した。

PPCは1997年以来、世界の海上貿易の要衝であるパナマ運河の主に港を運営してきた。今回の司法判断は、25年以上にわたる事業の根幹を揺るがすものとなる。

対立の背景と中国政府の動向

両者の対立の背景には金銭的な問題がある。パナマ政府側は、PPCが1997年から2023年にかけて37.8億ドルの売上高を上げながら、国への支払いはわずか2.36億ドルに過ぎないと主張。会計上の誤りや損失の責任を追及している。

これに対しPPCは、パナマ側の主張を全面的に否定し、自社の経営は適切だったと反論している。この事態を受け、中国外務省は1月30日と2月2日の記者会見で、中国企業の正当な権益を断固として守る考えを表明したと、新華社通信などが伝えている。

日本への影響と今後の展望

パナマ最高裁によるCKハチソン子会社PPCの港湾運営権無効化は、日本企業にとって中南米インフラ投資における新たなリスク要因を提示する。まず、中国企業の海外インフラ事業が、現地の政治・司法判断により突如として覆される可能性が顕在化した。PPCが25年以上にわたり運営し、37.8億ドルの売上を計上しながら、パナマ政府への支払いが2.36億ドルに過ぎなかったという報道は、契約内容の透明性や現地政府との関係構築の重要性を浮き彫りにする。日本企業が中南米で港湾や鉄道などのインフラプロジェクトに参画する際、長期契約の法的安定性や、現地政府の財政状況・政治的思惑による契約見直しのリスクを、これまで以上に厳しく評価する必要がある。

次に、中国政府が「自国企業の権益を断固として守る」と表明したことは、日本企業が中国企業と共同で第三国インフラ事業を進める際の潜在的摩擦要因となる。万一、共同事業が現地政府との紛争に発展した場合、中国政府の介入が日本の国益と必ずしも一致しない可能性も考慮すべきだ。

最後に、パナマ運河という国際貿易の要衝における中国企業のプレゼンス低下は、日本のサプライチェーン戦略に影響を与えうる。PPCの運営権喪失により、パナマ運河の安定的な利用環境が一時的にでも不安定化すれば、アジアと米州を結ぶ海上輸送に遅延やコスト増が生じ、日本の製造業や物流企業に直接的な影響が及ぶ。日本企業は、パナマ運河経由の輸送に過度に依存せず、代替ルートの確保や在庫戦略の見直しを検討する必要があるだろう。