中国が国家戦略として基礎研究を強化し、技術的自立を目指している。習近平総書記の号令の下、量子コンピューティングなどの分野で具体的な成果が出始めており、企業も研究開発への参画を加速させている。

基礎研究を国家戦略の柱に

中国は、高度な技術的自立を達成するため、基礎研究を国家戦略の重要な柱と位置付けている。新華社通信によると、習近平総書記は基礎研究の重要性を繰り返し強調しており、国家戦略上のニーズに応えるため、研究開発体制の強化が急務だと指摘した。

量子コンピューティングで世界をリード

基礎研究強化の成果は、量子コンピューティング技術の進展に表れている。中国科学技術大学の郭国平教授は、この分野の開発には「基礎的な課題から着手し、長期的な投資が必要だ」と述べる。

同大学などが開発した量子コンピューター「本源悟空」は、これまでに世界で76万件以上の量子コンピューティングタスクを処理し、アクセス数は4200万回を超えた。これは、中国が基礎研究から実用化への段階に進んでいることを示している。

産学連携で研究開発を加速

政府主導の研究だけでなく、企業の役割も増している。深圳市の河套深港科学技術イノベーション協力区にある鋼研国際新材料イノベーションセンターは、材料科学分野の「データファクトリー」構築を進めている。

こうした動きは、企業のイノベーションにおける主体的な役割を促し、多様な組織が積極的に参加・連携する基礎研究体制を構築するという国家目標に沿ったものだ。

まとめ:日本への示唆

中国の基礎研究強化は、日本企業にとって技術サプライチェーン再編の機会とリスクを同時にもたらす。量子コンピューター「本源悟空」が既に76万件以上のタスクを処理している事実は、中国が特定分野で実用化レベルに達し、先行していることを示す。これは、日本企業がこれまで中国に依存してきた部品や技術において、代替調達先の検討を加速させる契機となる。特に、半導体製造装置や高機能材料分野では、中国の国産化進展により、日本の輸出機会が減少する可能性がある。

一方で、中国の基礎研究への巨額投資は、新たな技術標準やデファクトスタンダードを生み出す可能性を秘めている。例えば、中国科学技術大学が主導する量子コンピューティング技術が国際的な標準となる場合、日本の関連企業は中国市場へのアクセスにおいて不利になるリスクがある。しかし、深圳市の河套深港科学技術イノベーション協力区に見られるような産学連携の強化は、日本企業が中国の研究機関や企業と共同研究を進めることで、最先端技術開発の恩恵を受ける新たな協業機会も創出する。特に、材料科学分野の「データファクトリー」のような取り組みは、日本の素材メーカーにとって、新たな共同開発や市場開拓の可能性を提示するだろう。