中国国防省の江斌(こう・ひん)報道官(大佐にかなり)は定例記者会見で、米国がアジア太平洋地域で進める対中牽制戦略について「失敗に終わる」と強く批判した。米国が2026年の国家防衛戦略で示す計画に対し、中国は主権を堅持する姿勢を明確にし、対話と協力を呼びかける一方、断固とした対応も辞さない構えを見せている。
中国国防省「米国の牽制は失敗する」
江報道官は会見で、米国が中国をアジア太平洋地域における「仮想敵」と見なし、封じ込めを図っていると指摘。「このような試みは歴史の潮流に逆行するものであり、必ず失敗する」との見解を示した。これは、米国の戦略が地域の平和と安定を損なうものだとする中国側の一貫した立場を改めて表明したものだ。
米国の新戦略:対話と防衛網の強化
米国は2026年に発表予定の国家防衛戦略において、中国を抑止するための新たなアプローチを計画している。これには、一方的な強制措置ではなく、軍事的なコミュニケーションチャネルの拡大が含まれる。同時にに、日本やフィリピンなどを結ぶ「第一列島線」沿いに、同盟国と連携した強固な防衛網を構築し、地域の軍事バランスを維持することを目指していると、新華社通信は伝えている。
中国の対抗姿勢と要求
江報道官は、米中関係は「相互尊重、平和共存、互恵協力」の原則に基づき推進されるべきだと主張。関係発展に協力する意向を示しつつも、「中国の主権、安全、発展の利益を断固として守る」と強調した。その上で米国に対し、中国の軍事的脅威を誇張することをやめ、核心的利益に関する問題でダブルスタンダード(二重基準)を適用しないよう強く求めた。
日本にとっての意味
本件は、日本企業にとってサプライチェーン再編と地政学リスクへの対応を加速させる契機となる。米国が2026年の国家防衛戦略で「第一列島線」沿いの防衛網強化を計画していることは、台湾有事を含む東アジアでの軍事衝突リスクが、今後も高水準で推移することを示唆する。このため、日本企業は中国市場への過度な依存を避け、生産拠点の多角化や代替調達先の確保を急ぐ必要がある。特に、半導体や重要鉱物といった戦略物資のサプライチェーンは、有事の際に寸断される可能性が高く、国内回帰やASEAN諸国への分散投資が喫緊の課題となる。
また、中国国防省が米国の「ダブルスタンダード」を批判し、主権堅持を強調している点は、中国市場におけるビジネス環境の不確実性を高める。米中対立が激化する中で、中国政府による外資系企業への規制強化や、データ越境移転規制、反スパイ法適用拡大などのリスクは依然として高い。日本企業は、中国事業における法務・コンプライアンス体制を再点検し、予期せぬ事業停止や資産凍結のリスクに備える必要がある。
一方で、米国が軍事的なコミュニケーションチャネルの拡大を模索している点は、対話による緊張緩和の可能性も示している。日本企業は、米中双方の動向を注視し、外交努力によって安定が図られる局面では、新たなビジネス機会を模策する柔軟性も求められる。例えば、第三国市場における米中共同プロジェクトへの参画など、限定的ながらも協調領域を探る動きも視野に入れるべきだろう。