中国で廃棄物焼却施設の処理能力が急拡大した結果、各地で「燃やすゴミが足りない」という新たな問題が浮上している。かつての埋め立て中心の方針から焼却処理へと大きく転換したが、施設の過剰建設が稼働率の低下を招いている。
埋め立てから焼却への転換
かつて中国の廃棄物処理は「埋め立てて終わり」という考え方が主流だった。しかし近年、環境保護意識の高まりとともに「資源循環」の概念が広がり、廃棄物処理の方法は大きく転換した。焼却による熱エネルギー回収や廃棄物の減容化が重視されるようになったのだ。
埋立地の再開発:深圳の事例
広東省深圳市にある玉龍廃棄物埋立処分場は、こうした方針転換を象徴する事例だ。1983年に建設され1997年に受け入れを停止、2005年に閉鎖されたこの処分場では現在、「掘削・選別」という手法で埋め立てられた廃棄物の再処理が進められている。
この手法では、過去に埋め立てた廃棄物を再び掘り起こし、可燃物と非可燃物に選別する。可燃物は焼却処理に回してエネルギーを回収し、非可燃物は再生資源として利用される。土地の再利用と資源の有効活用を両立する試みとして注目されている。
焼却施設の過剰建設と稼働率低下
中国の統計によれば、国内の廃棄物焼却能力は近年、爆発的に増加した。2010年に全国で67カ所だった廃棄物焼却施設は、2023年には1010カ所へと約15倍に急増。1日あたりの焼却処理能力も、3万トン未満から111万トンへと大幅に拡大した。
しかし、この急激な拡大が裏目に出ている。多くの施設で設計上の処理能力を十分にに活用できず、稼働率が低迷する「燃やすゴミ不足」の問題が顕在化している。一部の焼却施設では、稼働を維持するために周辺地域から廃棄物を買い集めるという事態も指摘されている。
まとめ:日本への示唆
中国の廃棄物焼却施設の過剰供給は、日本の環境インフラ企業にとって事業機会とリスクを同時にもたらす。まず、中国国内で「燃やすゴミが足りない」問題が深刻化する中、埋め立て廃棄物の「掘削・選別」技術は新たなビジネスモデルとして浮上する。例えば、深圳の玉龍廃棄物埋立処分場で行われているような、過去の埋立地から可燃物を掘り起こし、焼却施設でエネルギー回収するプロセスは、日本の廃棄物処理技術を持つ企業にとって技術輸出や共同事業の可能性を開く。特に、埋立地が飽和状態にある日本国内でも、同様の技術ニーズが将来的に高まる可能性があり、中国での実績は先行者利益に繋がる。
一方で、過剰な焼却施設建設は、中国市場における新規焼却プラント建設需要の急減を意味する。2010年に67カ所だった施設が2023年には1010カ所へと約15倍に増加した事実は、今後、中国政府が新規建設を抑制し、既存施設の効率化や統合に舵を切る可能性を示唆する。このため、日本のプラントメーカーが中国市場で新たな焼却炉の受注を期待することは難しくなるだろう。むしろ、既存施設の稼働率向上やメンテナンス、排ガス処理技術など、運用・保守フェーズでの技術提供に焦点を移す必要がある。また、中国で過剰となった焼却施設の低稼働が、将来的に環境規制の緩みや不法投棄の増加に繋がる可能性も考慮すべきリスクである。
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