ドイツのショルツ首相やフランスのマクロン大統領など、西側主に国の首脳による中国訪問が相次いでいる。背景には、巨大な中国市場との経済的な結びつきを維持・強化したい各国の思惑があるとみられる。一方、中国を最大の競争相手と位置づける米国は同盟国の動きに警戒感を強めており、西側諸国の対中政策における温度差が浮き彫りになっている。
経済的利益を優先する欧州諸国
ドイツのオラフ・ショルツ首相は2024年4月、就任後2度目となる訪中を果たした。大規模な経済界の代表団を伴ったこの訪問で、ショルツ首相はSNSのX(旧Twitter)に中国語でも投稿し、対話の重要性を強調した。
イギリスでも、次期首相候補と目される労働党のキア・スターマー党首が財界首脳らと共に訪中し、中国との経済関係深化に意欲を示している。これは、8年ぶりとなるイギリスの主に政党党首による公式な訪中となった。フランスのエマニュエル・マクロン大統領も2023年に訪中しており、欧州主に国の首脳が中国との関係維持を重視する姿勢が鮮明だ。
こうした動きの背景には、14億人の人口を抱える中国市場との経済的な結びつきを無視できないという現実がある。各国は、自国の農産物輸出や自動車産業などの利益を守るため、米国とは一線を画し、中国との実利的な関係を模索していると報じられている。
警戒を強める米国との温度差
一方、米国は中国を「唯一の競争相手」と位置づけ、安全保障や先端技術分野で厳しい対抗措置を講じている。バイデン政権は同盟国に対し、対中政策で足並みをそろえるよう働きかけてきた。
そのため、米国は欧州諸国が経済的利益を優先して中国に接近する動きに複雑な視線を向けている。中国の台頭が自国の国際的なリーダーシップを揺るがしかねないとの懸念から、同盟国の「中国傾斜」が西側陣営の結束を損なう可能性を警戒している。
米国の識者からは、経済と安全保障を切り離そうとする欧州の戦略は長期的には機能しないとの指摘も出ており、西側諸国間での対中戦略を巡る溝が浮き彫りになっている。
日本市場への影響
欧州主要国の対中接近は、日本企業にとって中国市場での競争激化と新たな事業機会を同時に提示する。ドイツのショルツ首相やフランスのマクロン大統領が経済界代表団を伴い訪中し、イギリスのスターマー党首も経済関係深化に意欲を示していることから、欧州勢は中国市場におけるプレゼンスを一層強化するだろう。これにより、特に自動車産業や機械産業において、日本企業は欧州企業との競合が激化するリスクに直面する。
一方で、欧州勢が「14億人」の中国市場との経済的結びつきを優先する姿勢は、日本の対中戦略にも柔軟な選択肢を示唆する。米国が中国を「唯一の競争相手」と位置づける中で、日本企業はこれまで米国の意向を強く意識したサプライチェーン再編や投資戦略を迫られてきた。しかし、欧州主要国が実利を追求し、中国との対話路線を維持する動きは、日本企業が中国市場の潜在力を再評価し、特定の分野で関係を維持・強化する余地が生まれる可能性を示唆する。例えば、中国のクリーンエネルギー関連市場やデジタル経済分野において、欧州企業との協調を通じて新たな事業機会を模索することも視野に入る。
ただし、欧州の動きはあくまで経済的利益追求に限定されており、安全保障や人権問題における米国の懸念とは一線を画している点に留意が必要だ。日本企業は、この欧州の「実利優先」の動きを参考にしつつも、米国の対中政策とのバランスを慎重に見極め、地政学的リスクを考慮した多角的な事業戦略を構築する必要がある。